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「しくじった……だと?」
「…ごめんなさい。ジェイダー。」
「あの程度の海賊に、何を手こずる事があった」
「……。」
「役立たずが」


灰色の壁に背を持たれていたジェイダーがそこから体を離す。
「まあいい」
思惑ありげに歪んだ唇はさらに言葉を紡いだ。

「奴らの居所はとうに知れている。次は、この私が直々にその芽を摘んでやろう」
「…」
「お前は私の言う通りに動け。もう失敗は許さん」



ハンナは彼の足元に傅いて、尖った爪先が向きを変えるのをじっと見つめていた。

「……。」





――「キッドさんに、何したの」


――「でも、その倍くらい嬉しくて、安心して、どうしようもなく、やっぱりキッドさんが好きみたいなんです」


――「だいすきです」



――「だから、お願いだから………





「…わたしの、こと、も」

ハンナの喉の奥から、小さく漏れ出た声。ジェイダーは足を止め、振り返った。

「何か言ったか?」

「……、」
首を振る彼女。
再び視線を落として、唇についた赤をぎゅっと拭った。


所詮、私はただの道具だ。

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