35


白い海。

どこまでもどこまでも広がる白い海の上を私は一艘のボートで進んでいた。
「おい、もう漕ぐな」
振り返ると腕を組んで私に指示するキッドさんの姿。
「オールを捨てろ」
でもキッドさん、こんな所でオールを捨てたら、私達遭難しますよ?
「どうせ岸にはつかねェよ」
でも
「良いから捨てろ」
私からオールを奪ったキッドさんは、それを遠くに投げ捨てた。
水柱はたたず、ちゃぽん、と小さく音を立ててオールは白い海に消える。あーあ。

「あんなもんなくたって、俺達は航路を失わねぇ」
「キッドさん」
「お前はただ俺の後ろだけを歩いてろ」
「キッドさん」

「死ぬまでは、護ってやる。」


――ガバッ


「うお、な、何だテメェ」
「………はぁ…夢」
「急に体起こすんじゃねぇよ!運んでる身にもなりやがれ!!」
「キッドさん……」

どうやらさっきのは夢だったようだ。
(…変な夢)
私はキッドさんの首に腕を回して、深く溜息を吐いた。
「…………おんぶっっ!!!!??」
「テメェ!」
どさどさっゴンッ

top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -