◆40◇
「肩書きが欲しいってことか」
キッドさんの言葉に私は首を振った。
「欲しいのは肩書きじゃなくて権利です」
「権利だと?」
「キッドさんに触れたり、やきもちやいたり、キッドさんからのラブを一身に受けたりできる権利が欲しいです」
「ハッ、バカかテメェは」
私の必死の糾弾を、キッドさんは鼻で笑い飛ばした。
「そんな権利そもそも存在しねェよ」
「え.....じゃあ、キッドさんは、欲しくないんですか」
「お前の権利か?これ以上馬鹿抜かしたら張り倒すぞ。」
キッドさんは言った。
「そんなもんはこの船に乗った時からとっくに俺のもんだ。今更分かりきったこと言ってんじゃねェぞ」
あっと、言う間もなく。
ぼとんと涙が落ちた。
「........あ、お....おなじじゃない」
「あ?」
「わたしと、キッドさんの気持ち、.....お、同じじゃなかった!」
私の顔を見てキッドさんが何か言おうとしたのは見えたが、私は泣きながら真っ赤になって、恥ずかしくて惨めでたまらなくなって、キッドさんの部屋から逃げ出した。
(.....求めすぎた!)
勘違いして、求めすぎた。
キッドさんが昨日くれた愛は、私が毎日押し付けていた愛と同じ味のする、けれど全く別のものだったのだ。
「恥ずかしい.....恥ずかしい恥ずかしい!」
ごめんなさいキッドさん。
欲張りはもう辞めますから。自粛して、いつものうに一方通行の変態少女に戻りますから、
だからさっきの発言は全部忘れて。
どうか、どうか降りろなんて言わないで.....。
「ごめんなさい、キッドさん...」
決意を内側から拒むように涙だけが止まらないのも、大丈夫、今だけですからね。
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