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「キッドさーん!今日の夜ご飯はキッドさんの大好きなロールキャベツのロールキャベツ巻ですよ!名付けてロールキャベツ・マトリョーシカ!ちなみに真ん中の層には私の愛をペーストしてあります!うふふふん」
「.......」
「おっふぅ.....無視.....」


無視どころかギロリと睨み付けられてしまった。
無言で巨大ロールキャベツをほどき始めるキッドさんを横目に、私も隣のテーブルにこっそり座ってその後ろ姿を眺める。

「はあ.....かっこいい」
「.......なあ、お嬢」
「ん?何ですヒートさん」
「お嬢と頭って.....その、昨日」
「オイやめろバカ!」

ヒートさんはスパンと頭を叩かれてワイヤーさんに連れていかれる。しかし二人のこそこそ話は私の耳に筒抜けだ。

「滅多なこと聞いてんなよ!」
「だって気になるじゃねえかよー!」
「そりゃ気になるけど!!頭見てみろ!ありゃかなり機嫌悪いぞ」
「それじゃあ」
「ああ、きっとあの子またやっちまったんだ.....」
「クソ...ッだからあれほどポケットティッシュは常備しろと」
「そして朝目が覚めて記憶はまっさら。頭は1人悶々と」

「ちょっとそこ!!勝手な憶測はお控えくだされよ!!」

私は立ち上がって言い放った。
ヒートさん、ワイヤーさんのみならず、その場にいた全員の注目を浴びる。

「私は別に昨日鼻血を出して倒れたりしてないし」

えっ、そうなのか?とヒートさん。

「また昨日の記憶もしっかり残ってますし!」

マジでか!と、ワイヤーさん。
そして私は言い切った。

「私は昨晩!正真正銘つま先から頭のてっぺんまでキッドさんのものになったんです!ね、キッドさん」

全員の視線がぞろっとキッドさんに向いた。
最後のひとつのロールキャベツを口に放り込んだキッドさんが、「ああ」と事もなさげに頷くと、ーーーー船内、大絶叫。

「うおおおおお!!!」
「良かった!!良かったな頭、なまえちゃん!!」
「ヤベぇなんか泣けてきた、ううぅっ」
「宴だァァ!!」

大騒ぎの食堂で着席した私は、内心こっそり安堵した。良かった、キッドさん、キッドさん.....。私の意図を汲んでくれた。良かった。

(好きですよ.....。キッドさん)

いつもは湧いてくる想いを、私は今日初めて念じるように唱えた。

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