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瞼の上から陽光を感じて目を覚ませば、目の前に逞しい背中が見えた。
自分の姿に目をやり、もう一度瞼を閉じる。

(ゆ……夢じゃなかった)

あんなにお酒を飲んだのに昨日あったことは全部覚えてる。そんな自分を褒め讃えたい。キッドさん筋肉すごい。ていうか、お色気すごい。ていうか、ていうか……


(し、ちゃったんだぁ……)

信じられない気持ちでいっぱいだ。
前は布団に忍び込むのも一苦労だったのに、今じゃ抱きつくのも一緒に寝るのも、たぶんキスもなにもかも許してくれてる。すごい。

すり、と背中に額を寄せる。
なんだか分からないけど泣けてきた。
恋が届いた実感がある。好きな人を好きでいることを許されるのって、こんなにも嬉しいことだったんだ。
触れ合うのって、こんなに気持ち良いことだったんだ。


「………………何で泣いてんだよテメェは」
「!!」

声と同時に体がこちらに向き、寝起きのキッドさんとバッチリ目が合ってしまった。

「おっ、おはようございまする」
「ああ」
「先に言っときますが!シラフでキッドさんの裸を直視すると私のブラッドソードが黙ってません」
「つまり鼻血だろうが」

ローテンションのツッコミを受けて、ベッドの下に手を伸ばしたキッドさんがティッシュの箱を取って投げ渡してきた。「詰めとけ」「ハイ」言われるがままに詰めた。

「……で、何だ。まさか後悔してんじゃ」
「してるわけないじゃないですかバカですか!やっと、ようやく、キッドさんが手に入ったていうのに後悔なんてするわけない!!!」
「煩ェし別に手に入ってねェし、じゃあなんだ」

一度詰まった言葉は、彼の目線に耐えきれずに吐き出してしまった。

「初めて、傷つける以外の目的で触れられたんです」

キッドさんの少しだけ見開かれた目から視線を逸らす。哀れみを誘いたいわけじゃない。
ただ伝えたかった。

「そうしたら、あんまりにも気持ちよくて、心地よくて……今までにないくらい満たされてしまって、幸福でどうにかなりそうで」
「、なまえ」
「キッドさん、私ね」
キッドさんの言葉を遮って続ける。

「キッドさんの側に居られるなら、手下でも雑用でもなんだってよかったんです」

けど、

こうして体をあわせることが許されるのが、
心を寄り添わせることが許されるのが、その関係だというのなら

「私……キッドさんの恋人になりたい」

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