なまえの消えたベッドを見つめながら、ヴォルデモートは人知れずため息を落とした。

やっとあの忌々しいホグワーツから連れ戻したというのに。あいつはまた私の庇護から離れることを選んだ。今度こそ、鎖をつけて部屋に閉じ込めてやってもよかったのに、俺様はそうしなかった。何故だ。(信じたのか?あいつを) そんなはずがない。俺様は誰も信じぬ。(では何故行かせた) あいつの馬鹿げた使命のせいだ。(今度こそ、帰ってこないかもしれないな) その時は奴が死ぬだけの話だ。後悔は無い。




「、………あるはずもない。」







バチン。


「あ、卿ただいまー!!ちょ、杖忘れちゃってー!枕の横に置いといたの忘れててほら、あった!あはは、これないと私来た意味(笑)ってなるとこだった。危ない危ない。へへ、ほいじゃーまたね!」

バチン。


「……。」

ヴォルデモートはベッドの足を思いっきり蹴飛ばして、盛大に舌打ちをして、枕を杖の一振りで八つ裂きにしたあと仕事に戻った。

心の中で、あの女の面の皮は象数頭分の厚さに匹敵する、真面目に考えた私が間抜けだった、次ノコノコ帰ってきやがったら枕同様八つ裂きに…等の悪態をつきながらのことである。
思いの外気軽に行き来ができるらしいことにわずかに安堵したのは、本人すら気付かぬ心の端でのことだった。
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