校長室から出た後、すぐに私は呼び止められた。
「なまえ!!」
「あ、シリウス」
「あ、じゃねーよバカ」

眉を吊り上げながら、でもホッとしたようにシリウスは告げる。
「皆で探してたんだぜ」
「あは、シリウス傷だらけ」
「お前のチキンの所為だ」

腕をついと伸ばし、彼の頬にできた傷を撫でた。通りすがる学生達がぎょっとしたようにこちらを見ていたが、もっとぎょっとしていたのはシリウスである。

「痛いの痛いの、とんでけ」

シリウスの頬の傷が消えていく。
マジか、
あたし。

「治った……?冗談だろ」
「―――前にさ、お世話になってる人に言われたの。
『お前の魔力は底が見えない』って」

だけどその時はこんな事できなかった。今は出来る。私の魔力、前よりずっと強くなってる。

「………ちょっと来い」
「え?どこ行くの」
「いいから来い」
「授業は?」
「どうせ次も受ける気なかったろ」

まあそうなんだけど、とは言わずに、黙ってシリウスに腕を引かれる。

「そんな顔してるやつ、ほっとけねえだろ」





何処へともなく、シリウスは私の手を握って歩いた。行く当てなんて最初から無かったのだろう。
「お前、どんどん力が強くなってくって言ってたけど」
「うん。……どうしてかは分からないんだけどね」

こっちの世界に来る前は魔法なんて少しも使えなかった。(使おうとも思ってなかったけど…)
ヴォルデモートさんのお屋敷に飛ばされて、魔法が使えることが分かって、でも、あの頃にはもう強力な魔法も使えて…。

「このままどんどん魔力が大きくなって……わたし、人間のままでいられるかな」

大切な人たちから化け物扱いされちゃったら、私きっと立ち直れないんだけどなぁ
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