今日は、ホグワーツで出会った色んな人達、全員に会いに行くんだ。
それで他愛のない話をして、きっともう二度と会えないからハグをする。出会えて嬉しかったよ、ありがとうって…―――

「――――いや、しめっぽ!!!」
私の隣に居たシリウス達がビクッと肩を跳ねさせる。まあ、突然叫んだ私が悪いんだけどね?

「あたしに湿っぽいの似合わなくね!?」
「う、うん、まあそうだね…」
「どうしたんだい?急に」
「悩み事があるなら聞くよ、なまえ」
「次の魔法史のテストならもう手遅れだと思うけどな」
「お黙りシリウス!」

私は私の意思でここに訪れ、私の意思で帰ると決めたのだ。これではまるで卿に無理やり連れ去られてしまうようではないか。

「私はかぐや姫じゃないっつーの」

最後くらい真面目に勉強すっか、と開いていた教科書に杖を向け、ひと振り。
「ヒバード!」

バサッ、バサバサッ、
「お、おいなまえ!!?」

黄金の風に煽られたページは次々と破け、瞬く間に紙の鳥が量産されていった。椅子から転げ落ちたピーターには悪いが、出来の良さは文句無しだ。

「はーい、整列!」
談話室に居た他のグリフィンドール生達も何だ何だと群がり始める。私はにっこりと笑みを浮かべた。
「なまえ!一体何するつもりだい!?てか、何この鳥達!」
「ビバードなんて呪文初めて聞いたぜ」
「ああ、一昨日あたしが作ったの。なぜか早起きしちゃって暇だったんだもん」
「まさか!!僕らの歳で新しい魔法を作れる人なんて聞いたことないよ!」
リーマスは大げさに驚いて居たけど、たぶんあの人はできたんだろうなぁ、と私は内心で苦笑した。「いてぇ!」あ、シリウスが噛まれてる。


「説明しよう!」

私は靴を脱いでソファの上に立ち、談話室にいた生徒達を見下ろした。ローテーブルの上には約30匹ほどの紙の鳥が落ちないようにとひしめいている。

「この子達は学校の秩序を乱す者を片っ端からつつきまくる超精鋭部隊、通称、ヒバード」
「……秩序を乱すって、僕らじゃないか」
「だからさっきシリウスは噛まれたんだね」
そう言うリーマスはヒバードを膝に乗せ、首元をこちょこちょやっている。

「今から3分後、このヒバードを学校に解き放ちます」
「何だって!?」
「ちなみにこいつらは午前0時にならないとストップしません」
「じゃあ俺達は今日一日何もできないってことかよ!!」
「困るな、なまえ。僕らは悪戯仕掛け人だぜ?」ジェームズは言う。
「そんな僕らに今日一日平和に過ごせって言うのかい?」

チッチッチッ、甘いなジェームズ君よ。

「それじゃ何にも面白くないでしょ?だーかーら」
私はポケットからあるものを取り出して、とりあえず近くにいた四人に問答無用で吹き掛けた。

「な、なんだ!?」
「香水!?」
「ピンポーン!……でもただの香水じゃございません」
私がそう言い放ってから数秒後、彼らの体に変化が起きた。



「ちょ、パットフッド!!君耳生えてるよ!」
「あ!?」
「うわぁあジェームズ!耳!!!ピンクの!うさ、うさ耳…!!」
「僕のは何?なまえ」
「リーマスは猫耳かなーたぶん。ピーターはネズ耳だね!イェス!ミッキーマウス!」
「笑い事じゃねえよ!!」

四人の混沌が談話室に染み渡り始めた頃、私は説明を始めた。

「その名も『アニーメーガスもどき』!」
「……動物もどきもどき…?」
「この前通販で買ったんだ。安売りしてたから」
香水を自分にも向けて吹きかける。

「この香水に触れると体の一部が、犬、猫、うさぎ、ネズミ、ゾウ、ライオンなどなどの動物に変化します」
「あ、なまえトラだ!耳と尻尾出てるぜ」
「まじか。かわいい?」
「わりと…」
「じゃあよし。えい!」

その辺りにいた適当な生徒にもそれを噴射して、私の周りからジェームズ達以外の人がはけた頃に説明再開。ふう、今日も談話室は賑やかだ。

「一人につき悪戯みっつ」
私、今かなり悪い顔してる。

「皆!この条件を満たさなかったら、永遠になんちゃってアニメーガスだぜ!」
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