「――――私は、本当はこの世界の住人じゃないの」
「この世界…?」
「魔法が普通に往来する世界のことだよ」
「じゃあなまえは……マグルの世界から来たって事?」
「まあ、そうだね。でもちょっと違う」

この前ホグズミードに行った時に買った缶のコーヒーをリーマスに渡し、私も彼の隣に腰かける。

「多分、私が今マグルの世界に戻っても、わたしの知っている人達や街はどこにもないの。――――本当に別の世界から来たんだよ」
「……」
「さすがに信じられないかな」
「信じるよ。」
すかさずリーマスは答えた。

「でも……一体どうして」
「それは私も分からない」
「なまえ、君は…どうしてここへ来た時、ここが別の世界だって分かったの?」
「―――私が元いた世界ではね、この世界のお話が小説になっているんだよ」

リーマスは息を飲んで目を丸めた。

「主な登場人物は、君らが大人になった世代の子供達」
「……ぼ、僕らも出てくるのかい?」
「うん。リーマスは、主人公を正しく導いてくれる優しい大人だったよ」
「じゃあ、ジェームズや……シリウスやピーターも?」
「――うん。セブルスもルシウスも、ダンブルドア先生も皆出てくる」
「すごい!!ねえなまえ、その話、もっと聞かせてよ。今からシリウス達も呼んでさ」
「だめだよ、リーマス」

興奮気味だったリーマスに私は告げる。

「今私が話したのは、未来に差支えのない部分だけだもん。これ以上は話せない……気が、するの」
「……もしかしてなまえは、僕達の未来を知ってるの?」

頷いてしまった。
リーマスは、それなら仕方ないか、とすんなり理解してくれた。

「不思議な子だと思ってたんだ。僕達の中に溶け込むスピードも速かったし」
「それは君らのコミュ力が高かったからだよ」
「それもあるね。でも他の子とはどこか違う気がした。―――ねえ。なまえ
君はもしかして、元の世界に帰ってしまうの?」

「……それはまだ分からないの」

元の世界に帰りたいと強く願ったことはあまりない。
それよりも

「この世界でも、私には帰る場所がちゃんとあるから」
「それってマルフォイのお屋敷のことかい?」
「ん?あー…その」
「……もしかして、前に話していた『トップハムハット卿』って人のところ?」
「!……ん、そ、そうなの(ごめんリーマス)」
「そっか」

リーマスはにっこりと安心したように微笑んだ。

「少し心配していたんだ。なまえ、家族の話をしないから。どんな扱いを受けてるんだろうって。寂しい思いはしてないかなって」
「リーマス……うん。」
寂しい思いなんて、そう言えば一度もしたことない。

「優しい人なの。本当はね」
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