一人部屋の夜は静かだ。私は暖かいパジャマを着こんで、ベッドにもぐりこんだ。ううむ、何だか今日は寝つきが悪い。

「ペガサースのーはしるーおーとー」

自作の子守歌を歌ってもだめっぽい。
歌詞を思い出そうとして余計に目が冴える。今日はジェームズのクディッチ見てセブと真面目な話し合いして……色々あったから疲れてるはずなんだけど。

コン、コン

「ほぶわっ!」

驚いた。まじで驚いた。なんせ窓の外に真っ白い骸骨が浮かんでいたんだもの。
でもよく見ればそれはこの前私が悪戯に使ったものと同じである。
私は窓を開けてうんざりと首をかしげた。

「……こんな遅くにレディの部屋を訪問するなら、もっとマシなやり方で来てほしいんだけど。―――ジェームズ」
「やあ、なまえ。夜分遅くに失礼したね」

これっぽっちも悪びれずににこっと笑うジェームズ。
思った通り彼は箒に乗って、例の白い骸骨を結びつけた紐をブラブラ回していた。

「今から寝るところだったんだよ」
「そう怒らないでくれよ。君を夜遊びに誘いに来たんだ」
「夜遊びって言っちゃうところが潔い」
「有難う。さあ、行こう。さっさとそのダサいパジャマを着替えて」
「ダサイ言うな」

まあちょうど眠れなかったし、せっかく来たのを追い返すのは可哀想だ。
「ちょっと待ってて」
私はしぶしぶと靴を履いて(靴のままベッドにもぐれないのは当然日本人の性格である。)上着を羽織って窓枠に足をかけた。

「う、寒……」
「マフラーとかしなよ、寒いんだから」
「この前ほつれたところを、気付いたセブルスに全部毛糸抜かれた」
「君スニベルスに何したの」

静かにツッコみながら私に、片手でほどいたマフラーを譲ってくれるジェームズ。
「いいの?」
「うん。それより早く乗ってくれる?手が痺れてきた」
「ではでは、失礼」

窓から箒に乗り移るってちょっと怖いな。下を見ないようにジェームズの後ろに飛び乗った。
「ちょ、ゆっくり乗るって選択肢なかったの!?」
「あ、なかった」
「一瞬僕もひやっとしたよ!」
「で、どこ行くの?」

ジェームズの腰に両腕を回しながら尋ねれば、ジェームズは企んだ顔で言った。

「誰にも見つかりそうにないところ」
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