賭けに負けた苛立ちからさっさと校内に引き上げた私だったが、戻って早々、いいものを発見してしまった。

「…あれは」

前方に見える黒髪弱天パ少年は間違いない!我が親愛なるセブルス君だ。私は光の速さで彼の背中に飛びつく。
途端「倒れちゃうかな」と不安に思ったが寸での所で踏ん張ったセブルスには感心した。

「……なまえ」
こうなってくると、振り向かないうちから私と確信しているセブルス。

「成長したな、セブ」
「誰かのおかげでな」
「?」
なんだろう、今日のセブルスは少し……落ち着いている感じが……。
抱き着いたまま斜め後ろからじっと彼の横顔を眺めていれば、不意にセブルスは体を反転させた。

「なまえ」

真面目な表情で私の目を見つめたセブルスは、重々しく、慎重に口を開いた。


「……僕と、お前は、友人だ」

どうしたんだろう、
セブルスの方から急に、こんなことを言い出すなんて

「そうだろう?」
「…う、うん」

どうしたんだろう、


「嘘じゃないな。―――僕に、嘘はつかないでくれ」


私には、セブルスがどうしてこんなに不安そうな顔をしているのか分からなかった。
でも、嘘をつかないでくれと言うから。

「うん!」

理由は分からなくてもいい。
ただ、友達かと訪ねられて。嘘を吐くなと言われてしまえば、特に考えることはあまりない。

「私はセブルスの友達だよ」

私がそう断言すると、セブルスは小さく肩を下ろした。くるりとまた前を向いてしまう。

「なら、別にいい」
「え!!この話お終い!?」
「煩いな、僕は図書館へ行くんだから離れろ」
「ええ!おしまいなの!」
「終わりだ。問いかけについての詳細を話す気は一切ない」
「こんにゃろう!セブが話さないならあたしも離さんからな!!」
「それとこれとは別だろう!」
「一緒に遊ぼう」
「ガキ!」

(いつものセブルスだ。)

さっきのは一体何だったんだろうと疑問に思う一方で、ほっとしている私が確かにいる。
――嘘をつかないでくれ。
あんな真摯に告げられたら私は嘘をつけなくなる。セブルスは知っていた。

僕に隠し事はないか?

そんなふうに尋ねられてしまえば、私はきっと言葉を失うんだろうな。
――私は隠し事ばっかりだよ、セブルス
それでもね、


「まだもう少し、皆と居たいんだよ」


(何か言ったか?)
(うん。セブルスともホグズミードへ行きたかったなって)
(……今度、行けばいい)
top