足を進める度にギシリと床が軋む。意気揚々と踏み出した私の後ろに、リーマス、シリウス、ピーター、ジェームズが続く。
感想、すげ汚い。
誰だよ、外見じゃ分かんないとかぬかしたの。外見通り滅茶苦茶汚いんですけど。何コレこの黒い変なの。うんこ?

バキキ!――あ、っと声を上げる間もなく、足を踏み出した部分の腐った床が崩れた。「なまえ!!!」と直ぐに反応したリーマスが手を伸ばしてくれたのだが、届かずに私落下中。


「ギャー!なまえが落ちたぞー!ぶ、無事かー!?」
「わ、わわわからないどうだろう!ここ腐ってるの忘れてて言い損ねちゃったホントごめんなまえ!!」
「なまえ―――!生きてるー!?」
「なまえ――!」

彼らの耳に暗闇の中から、「蛙チョコが粉々になった」という悲鳴が聞こえるまでに、そう時間はかからなかった。

「メーデー、メーデー!こちら…何か下の方。誰か私を引き上げてくれ」
「結構深いみたいだけど大丈夫?」
「うん、臭い」

会話の間に少し間が在るのは、それだけ深いという事だが。
話がかみ合って居ないのは何時もの事である。

「馬鹿だねキミ、ウンコがどうのとか言ってるからだよ!」
「テメーくそモジャ何であたしの心の声聞いてんだ!」
「なまえ!上がれそうか!?」
「んー、どうだろ。やってみ……キャ――――ッ!!」

突然下から上がった悲鳴に、四人はさっと真顔になって穴を覗き込んだ。しかしそこからはやはり、下の様子はうかがえない。

「なまえ!!どうしたんだッ」
「――まさか何かあったんじゃ」
「どうしよぉ……なまえ、ぐす」
「――とにかく、下へ降りよう。…なまえの声が聞こえない」
「待て!リーマス……下から何か上がって来るぞ」

立ち上がったリーマスが穴へ一歩踏み出すと、シリウスが制止の声をかけた。
誰もがなまえかと期待したソレは、徐々に浮遊しながら彼らの眼下に姿を現した。――それは、滑らかに白い、真新しい頭蓋骨。

「ど、っドクロのおばけっっ」
「まさか…なまえ……!?」

カタカタと歯を鳴らしたドクロは、ゆっくりと口を開いた。地獄から這いよるようなおぞましい、低い声色で。
「うらめぇしやぁぁあぁぁ」

四人の悲鳴が屋敷中に響き渡った。



「ぶあっはっはっは!!」
数秒間をおかずに悲鳴に重なる笑い声、涙目のシリウスは振り返ると同時に目を三角にして彼女に飛びかかった。
「何で後ろにいるんだよテメーはァァ!!」
「ひーっひひひ!ごめ、まさかこんなにいい反応してくれるとは思わなくて!!」
「ビビらすな!ぶっ殺すぞ!!」

胸ぐらをつかんでグラグラ揺するシリウスの横で、リーマスは深く安堵の息を吐いた。


「よかった……。怪我もなさそうだし」
「脅かさないでよなまえ…」
「で、落ちたはずの君が何でもう上がってきてるんだい?」
「ジェームズ汗凄いね」

そう一言置いて、私は宙に浮かんだ頭蓋骨を手元に引き寄せた。なんてことはない、さっきゾンゴのお店で買ったビックリ玩具だ。

「今さっき思い出したんだけどね、姿現しできるんだった」
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