私の爆弾発言に、予想通り、失神しかねないほど嘆き倒しあの手この手で私を説得しようと無駄な試みに時間を費やすルシウス。それを子守唄に深い眠りに落ちた私の朝は、それはもう慌ただしかった。


「おい!なまえ!おきろ!」
「……むにゃ」
「起きろっつってんだろカスやろう!なあ!」
「…るひゃいなぁ…!なによもー………グラス?」
「お前なんでまだここにいんだよ!」
「まさかあのまま寝てたのか…?」
「スパニエルも……あ、そっかここ蛇寮」

目をこすりながら辺りを見渡せば、猛スピードで銀色の何かが脇を過ぎ去った。え、なにいまの…
「…ルシウス?」

「ぼーっとしてる場合か!遅刻するぞ俺たち!」
「くそーっ…昨日にかぎって目覚ましかけ忘れた」
「え、あたし達遅刻?ルシウスも?」
「まだしてない!しそうだけど。」
「先輩は昨日何かとんでもなくショッキングなことがあって眠れなかったらしいぜ」
「…」
「とにかく急ぐぞ!」

慌てる二人につられて私もワタワタと立ち上がる。この際顔洗ったりなんだりは省略する他なさそうだ。

「まったく…!セブだのレギュだのはあたしに気づかなかったわけ!?」
「気づいたけど面倒だったんだろ」
「…」

ちぇ、と唇を尖らせながら、しかし内心では別のことを考えていた。

「二人は、起こしてくれたんだね!」
「「!!」」
「サンキューね」
「な、べ、べつに、たまたま目についたから声かけただけだ!」
「そ、そーだ!お前に勉強の借りつくんのもやだからな!」
「ふふっ…さすが蛇寮。」

廊下を駆け足で進んでいれば、少し先に見慣れたプラチナブロンドの優雅な後ろ姿。どんなに急いでいても走らない貴族魂には敬意を表するところだ。ということで


「おはよーん!ルッシウスー!」
「なまえさ、ぐっ」
「何であたしの事起こしてくんなかったわけぇ?んん?」
「は、離してくだ、離せ!こんな場所ではしたない!そもそも私だって誰かさんのせいで」
「あ!人のせいにするのは良くないですよ〜?このお寝坊さん!」
「(イラァッ)」
「なまえ!いい加減にしないとルシウス先輩キレる!」「っていうか遅刻!」



「「なまえ―――――!!」」

怒気混じりの大きな呼びかけに固まる。ルシウスの背中に抱き着いて引きずられるまま首を後ろに向ければ、グラスやスパニエルの更に後ろに仕掛け人達の姿が伺えた。うん、猛スピード。


「おまえ!昨日はスリザリンとこにいたんだってな!」
「なまえ!朝帰りなんてね、お父さんは許しませんよ!」
「今度からは目的地を言ってから出かけるんだよ、なまえ。ホントに心配したんだから」
「なまえ−、ごめんよ、僕がテストのことなんか言ったからだよね…ぐすぐすん」

各々が同時に好き勝手喋るため、ほとんど聞き取れなかったけど、とりあえず心配してくれたようだ。ありがとう。

「―――つーか離れろよ!」
「ほがっ」


シリウスにローブをひっぱられてルシウスから離された。さっきまで離れろと煩かったルシウスは何故か極端に嫌な顔をして離れかける私の腕を掴んだ。

「頭の悪い彼女を保護してやったのだ。感謝の一つもして欲しいところだと思うがね」
「ハッ、感謝なんて誰がするか。」
「ちょっとちょっと二人ともー、喧嘩はやめとこうぜー?ていうか腕もげる!」
「ミスター・マルフォイ。その手を離してくれる?彼女僕らのなんだ」
「おやポッター、目当てはリリー・エバンスじゃなかったのか?」

「喧嘩すんなつってんでしょ!ていうか、ていうか…遅刻ゥゥウウウウ!」
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