私の問いに、一瞬セブルスの存在を気にした様子のルシウスだったが、彼が眠っているのを確認して曖昧な微笑みを浮かべた。恭しく頭を下げるルシウス。

「それは私には、甚だ答えかねる質問でございます」
「…逃げた。」
「人聞きの悪い。」
「ほぎゃ」

すっと腕を伸ばして私の頬をつねるルシウス。しかしその強さから、悪意は感じられない。

「……普通なら、間髪置かずにイエスと答えます。それどころか殺されてしかるべき発言だと」
「oh…」
「当然でしょう。ここは敵陣営ですよ」
声を落としたルシウス。

「ですが、あなたは我が君に」
「?」

躊躇うように間をあけて、ルシウスは続けた。

「……少なくとも、私達よりは大切にされておられる」
「…え!!!」
「だから単にイエスとも言えないのです。あの方はもしかすると、なまえ様の」

もぞり。セブルスがわずかに身じろき、私達は一気に体を石にした。
「…」
しかし、小さな寝息は一瞬途絶えただけでまた聞こえ始めた。ルシウスはホッとため息を吐き、肩を下ろす。


「…ともかく。そんなに気になるなら一度帰ってみてはいかがです」
「むりむり!そんなんしたら二度と外出禁止んなるの目に見えてるし」
「でしょうな」
「あの屋敷に帰る時は、もう外出できない覚悟でいなきゃ!」

私がそう言うと、ルシウスは驚いたと言うように目を丸めた。


「私だって、悪いことした自覚はあるんだから」
「なまえ様……成長なされて」
「涙ぐまないでよ!自分どんだけ?って悲しくなるから!…って言っても、私がそんな覚悟できる日が来るわけないんだけどね」
「……は?」
「だからさ、つまり、」

ああ、今最強に悪い顔してる!


「痺れを切らした卿が迎えにくるまで、私ずーっとここにいる!」
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