「まったくもー。君いきなり乙女心をくすぐるの止めてよね」
「意味が分からない。お前の所為で僕まで怒られた」
「ほんと照れ屋さんなんだから」
「頼むから会話をしてくれ」
「会話。…ああ、そうだった。嫌じゃないよ!もちろん!だってセブルスは…」

人差し指を立てたなまえは一度言葉を切った。
不審に思ったセブルスは手を止めて顔を上げる。

「セ、セブルス…は…」

その状態のまま固まっていたなまえの顔に徐々に血が上っていく。セブルスはいよいよぎょっとして羽ペンを落とした。何だコイツ、なんだこいつ。
――何を言おうとしてるんだ。


***


「ちょ、押すなジェームズ」
「バッドフット、もっと向こう行けないのかい」
「これ以上行ったらバレる」
「二人とももっと声押さえないと聞こえちゃうよ」
「というか、僕らこんなところで何してるの?」
「分からないわ。でもなんか、すごく悪い事をしている気分」

セブルスとなまえが座る席に一番近い本棚の後ろにはジェームズ達が顔をそろえていた。(というのも、課題の資料を写しに来たリリーとリーマスに、ジェームズ達がついて来たのだ。)

そこで「静かに!」と怒鳴られているなまえとセブルスを発見、こうしてなぜか身を隠している次第である。


「なあ、なまえは何でスニベリー相手にあんな真っ赤になってるんだ?」
「女の子が赤くなる理由なんて決まってるよ」
「…まさかなまえ、今から告白するんじゃ」
「おいピーター!ふざけがすぎるぞっ、なまえがスニベリーに告白?そんなわけあるか」
「スニベリーなんて呼ぶのは止めて頂戴。それになまえがセブルスを好きになったっておかしくないわ。魅力的ですもの」
「魅力的?エバンス、あいつが魅力的ならディメンターだって魅力的だ」
「黙りなさいブラック」
「しー、気付かれちゃうよ」

ここから二人の会話は聞こえないが、それでも状況は分かる。
なまえが顔を赤くしたまま固まっているのを見て、シリウスは苛立ちを感じた。しかしそれは隣にいるジェームズや皆も感じているものだと思った。
仲間のなまえが、天敵のスネイプにとられたような。そんな、

「なまえが何か言ったようだよ」

口元を押さえて横を向いたなまえ。数秒間を空けて、セブルスの手が彼女の頬に伸びるのを見た。胸がズクリと痛んだ。

(お、おい…何だこれ)
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