「ねえヴォルデモートさん、ヴォルデモートさんは百味ビーンズと蛙チョコどっちが好き?」
「どっちも嫌いだ」
「ダウト!」
「は?」
「この前ヴォルデモートさんの部屋のゴミ箱の中に蛙チョコのゴミ発見しちゃったもん」
「あれはお前が置いてった食べかすだ!この間抜けめ」


頭にごちんと拳が降ってきたところで、私は目を覚ました。身体を起こすと不意に空腹感が襲ってきた。当たりは真っ暗。時計は午後1時を指していた。
――ちょっと寝るだけのつもりが、ずいぶん寝てしまったらしい。

「お腹減ったな」
私はこっそり起き上がって、とりあえず下に降りてみた。



暖炉の火は消えていたが、部屋にはまだ温かみが残っている。消灯時間を過ぎた今室内は真っ暗のように感じるが、ゴールドとレッドの厚めのカーテンを開けると、月明かりは窓の形の影を床に落としていた。

何を思ったか、私は月籠りの場所に椅子を持っていき、そこに座って外を見た。
お屋敷にいた時は、お腹が減ったらメイドさんが美味しいお菓子やパンケーキをいつでも持ってきてくれたなぁ。あれ、美味しかったなぁ。

千切れ雲が散らばった隙間から漏れ出た光にしては、明るい。
それでいて眩しい事もない静かな月明かりは、どうしてか私の心をたまらなく切なくさせた。
あんな夢を見たせいかもしれない。

「あいたいなー」

お腹がきゅるりとなった。
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