私は眠気に誘われるまま、厨房まで出向くのを諦めてベットに戻った。布団にもぐるとすぐに瞼が重くなる。私の意識はそこで途切れた。



「おい、そこの脳たりん、起きろ」
「……私どんだけ卿に飢えてんだろ…二回も夢に出てくるなんて」
「何を寝ぼけたことをほざいておる」
「アイタ!夢なのにっ、チョップが痛い!」
「夢じゃない。二度寝をするな!」

私に叱責の声を向けるのは、輪郭や声やその他もろもろが妙にクッキリしたヴォルデモートさんの姿だ。私のベットの脇に立ってこちらを見下ろしている。

「…」

私はむくりと体を起こしてその人物をまじまじと見つめた。身長、服の着こなし、黒い髪、こちらを見据える赤い双眼。似てる、似過ぎてる。

「もしかして……マジモン?」
「そう言ってるだろうが」
「え、えええ!!?」

ここはホグワーツだ。途中編入してきた私は都合の良い事に一人部屋をあてがわれたわけだが、もれなくホグワーツ!それに変わりはないのである。しかし目の前にはリアル100%のヴォルデモートさん。…どうなっとんじゃ!

「会いたい会いたいと煩いから、来てやったまでだ」
「い、言った覚えは」
「無いとは言わせんぞ」
「…言いましたはい…数十分前に」
「そうだろう」
「でも…!なんで分かるのそんなの」
「これだ」

ヴォルデモートさんが親指と人差し指でつまんで私に見せつけてきたのは、黒くて小さな…機械?だ。

「超小型盗聴器だ」
「ええええ」
「何だ」
「いやマグル大っ嫌いでしょあなた!」
「マグルは嫌いだが、その科学技術は賞賛に値する。これは新しく入ったデスイーターのマクベスが俺様に渡してきたものだ」
「マクベス勇気あんな」
「当然殺してやったがな」
「なんでやねん!!あれ、何このデジャブ!そういや卿…前に電気毛布持ってきてくれたデスイーターも殺してなかった!?」
「違う。ナギニの餌にしてやったまでだ」
「同じだよね!マクベスもたまったもんじゃないよね!」

現れたあのひと
top