目の前の豪華な料理に心踊らされてじゅるりと垂れそうになった涎を拭えば、隣でクスリと笑う声が聞こえた。

「そんなにお腹が減っているの?」
「え、あ…えぇと」
「私はリリー。リリー・エバンスよ。よろしくね」

カランカラン。手にしていたスプーンがテーブルに落ちる。私は口をはくはくと開閉して、やがて震えた声を絞り出した。

「……て……天使」
「え?」
「その神々しい頬笑み!優しさ溢るる友好的な眼差し!全てにおいてエンジェル!」
「そうともリリー!君は世界で一番美しい女性さ!」

いつの間にか私の向かいの席で立ち上がっている眼鏡の青年。私は彼に心当たりがあった。


「初めまして、なまえです!どうぞよろしくお願いします、リリー……ちゃん」
「ふふ。やだわ、リリーでいいわよ」

彼女はしばらく驚いていたようだけど、私がへこりと頭を下げるとまた優しく微笑みを浮かべてそう言ってくれた。本当に天使だ。目の前でこの駄眼鏡クンがうっとりする分けもわかる。

「あ、そうだ!……僕の名前はジェームズ・ポッター。リリーの未来の恋人さ!」
「え!」
「嘘よ、なまえ。彼の言う事はあまり真に受けない方がいいわ」

現在のジェームズとリリーの関係はこんなもんか。ひとり納得していれば、彼の傍でこちらを睨みつけるように見ていた黒髪のイケメン君と目があった。どことなく、卿と似ていると感じてしまうのは黒髪のせいだろうか。

「こっちは僕の親友で、シリウス・ブラック。その隣がピーターと、リーマスだ」
「…」
「よ、よろしく!」
「よろしくね」

ピーターにまだあの邪悪な面影は無くてほっとした。
やわらかく頬笑んだ鳶色の髪の少年は顔に幾つか傷が在り、そう言えば昨日は満月だったと思い至る。彼の前のテーブルにはお菓子とケーキが山積みだった。


「何はともあれ、グリフィンドールへようこそ……なまえ!」


眼鏡の奥できらきら光る瞳は宝石のようだ。なんてそんなことを考えながら、私も彼に笑顔を向けた。ありがとう!私、自分のやりたいことを、ここで見つけます!ここでなら。彼らとなら、出来る気がするから…!ただ。ただ、ね…

スリザリン席方面から背中に感じる射殺さんばかりの視線だけは、どうにかなりそうもありません。

友人たち!
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