雪が降った。

「なまえ様」
「んー?」
「切実に、質問いたします。何故私がこのような戯れ事に付き合わねばならないのですか」
「暇だから」
「それはあなた様の事情でしょう!私は忙しいのです」
「ごめん。私が暇だから皆暇かと思って」
「どんな理屈ですか」
「まあ小っちゃい事は気にすんなソレわかちこわかちこー!」
「(イラッ)」

大きな雪玉にそれよりも一回り小さな雪玉を乗せながら、傍に腕を組んで立っているルシウスに愚痴をこぼした。

「どんだけ言っても、卿ってば寒いの一点張りでやってくれないんだもん」
「当り前でしょう!むしろ我が君にそんなことを頼む神経を疑います」
「し…神経疑われちゃった」

黙っていればずっと卿に対する行いのあれそれを指導されてしまいそうなので、わたしはさっと話を切り替える。

「ルシウスさァ、もうあたしら友達なんだから敬語とか止そうよ」
「とんでもない」
「そんな遠慮しなくても」
「あなた様とは知り合い未満他人以上の関係でありたいものです。切実に」
「いやそっち!?てかそもそもね、ルシウスくん」
「はい」
「君の敬語には敬うといった類の気持ちがま〜〜ったく込められてないの。もはや嘲笑いすら含んでるの。そんな敬語ならいっそ止めちまえエエエ!」
「馬鹿野郎」
「ハハハ、記念すべき第一回目のタメ口がばかやろうって…あれれ目がかすんで前が見えない」


その後、死喰い人を集めて(もちろん卿も呼んで)無礼講的雪合戦を開始しようと発案したなまえに、傍にあったモミの木が被っていた雪を全て彼女の頭上に叩き落としたルシウスは思った。
(確かに、敬語など使うのも馬鹿らしい気はするが)

仕方あるまい
(我が君を翻弄するあなた様を)(多少は尊敬しているのだから)
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