十年後へ来ようが、ヴォルデモートさんと再会しようが、きっとおそらくもとの世界での現状が変わったわけではない。
つまり、私の親友ユニは今も命の危機が続いており、友人たちは彼女のために戦いを続けているのだろう。

ということは、だ。


「のんびり茶ァしばいてる場合じゃない!」

突然大声を出して立ち上がった私を、ヴォルデモートさんはしらけた目で見てくる。

「ヴォルデモートさん、私、ちょっくらあっちのワールドに行ってきても」
「なまえ」

ヴォルデモートさんはおもむろに私の名を呼び、こいこいと手招きをしてみせた。
言われるがまま着いていった私は、卿が机の下から取り出した段ボール箱の中を覗いて卒倒した。


「きっ、ききき、卿……これは」
「蛙チョコ一年分だ。貴様にやろう」
「どういうことなのっ」
床に崩れ落ちて拳を打ち付ける。

卿が
蛙チョコ
いっぱいくれた

「ヴォルデモートさん、わた、わたしまだ死にたくないっす」
「誰が地獄への餞別と言った」
「せめて天国がよかった…」
「これはお前が帰ってきた時のためにと買っておいた貯蔵品だ。有り難く受け取れ」

いつだったか、卿のお金でハニーデュークスのお菓子買い漁ったことあったけど、その時は請求書を見た卿に超怒られたはずだ。
どんな風の吹き回しだろうか。
びくびくしつつも、私はその蛙チョコに手を伸ばした。




しかし、卿の、いわゆるデレ期はそれでは終わらなかった。

「ヴォルデモートさん、私、やっぱり」
「ルシウス。夕食はこいつの好きなものを作らせろ。」
「はっ」
「なまえ、何がいい」
「え、……いや、え、と、じゃあ………リゾット」
「デザートはいいのか」
「ええ!!??デザッ、……?じゃあ……、お願いします」
「かしこまりました」


「ヴォルデモートさん、あの」
「そういえばお前、杖はどうした」
「え?……ああ、それが、過去に置いてきちゃったみたいで」
「フン、仕方ない。明日にでも買いにいくか」
「いやでも、私なくても。なんならそこらへんの木の枝でも」
「そんなもんが代わりになるか馬鹿者」
「え…えええ」


「卿、あの」
「私は今から死喰い人らと共に一仕事ある。眠ければこのベッドで寝ていろ」
首もとまで毛布を引き上げられて、額におやすみのキス。
「部屋を抜け出すなよ」

それだけ言って扉は閉められた。
鍵の締まる音もする。

私はヴォルデモートさんの、電気毛布までしっかりつけていってくれたそのあたたかいベッドにもぐりこんで、思った。なんか、ヴォルデモートさん……




(む――――っっっっっちゃ引き留めてくるぅぅぅぅ!!!)



ていうか何あれ!おやすみの、キス!?な、っだ、えっ、な、……何あれ!!!誰あれ!
私のいない十年そんなに寂しかったの!?
あんなデレッデレになるほど??らしくなすぎていっそ怖いよ!!なんならちょっと引くほどだよ!!?
ていうか、ていうか、

(出ていきにくいんですけど……!!!)
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