久し振りに教室のドアを開けると、私に気付いたクラスメイト達がわっと集まってきた。

「なまえ!胃腸炎はもう大丈夫なの?」
「お前生きてたんだな!」
「ほっぺのそれ、雲雀さんの洗礼受けたの…?」
「肺炎だって聞いたけど」
「え!俺は脳にバカの腫瘍ができたって」

ご覧の通りの噂一人走りっぷり。もう独走しすぎて本体全然ついていけてねぇ。というか脳に馬鹿の腫瘍とは。
その時、スパンと勢いよく頭が叩かれた。

「なまえあんたねー!!」
「あ、やっほー花!京子も」

そこには懐かしい友人二人の姿が。

「ヤッホーじゃないわよ!お見舞い行こうにもどこに入院してんのかも教えてくれないし、携帯も繋がらないし、ほんと心配したのよ!」
「うっ、ごめん」
「でも…元気になってよかった」
「京子ぉ…!!」

うう、こんなに優しい友達がいて、私幸せだ。
改めて二人にごめんねとありがとうを伝え、その日は久しぶりの並盛を、平穏に、平穏に過ごした。

放課後までの話である。





「そういうわけで、私一回魔法界に戻ってくるね」
「マジで咬み殺すよ」
「うわっぶ!恭弥ガチおこだ怖い!」

杖を片手に宣言した私の頭の上を恭弥のトンファーがぶわりと薙いだ。それをすんでで避けながら、必死に彼を納得させるための説明を続ける。

「だって今みんな10年後の世界にいるんでしょ!?魔法界にたしか、過去に行ける時計みたいなやつがあった気がするんだよね!」
「だったら何なの」
「それで未来に行ってから、こっちの世界に姿現しする」
「時間軸とか色々なめすぎじゃない?君」
「大丈夫大丈夫。最悪体が千切れるだけだから」

恭弥が突然私の体を抱き締めた。
な、な、なな、なんぞ!!?

「……千切れてもいい身体なら僕が千切ってあげるからここに居なよ」
「いや怖いよ!そして千切れてもいい身体じゃないからねこの私のパーフェクトボディは!」
「なまえ」

どうしよう……。
恭弥が解放してくれない。

悩んでいると、突然背後に気配を感じた。
私達が慌てて振り返ったときには、時すでに遅し。煙に巻かれて視界が暗転する直前、薬指の蛇がじくりと痛んだ気がした。
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