「なまえ、ついさっきまで何をしていたか言ってみろ」
「……ヴォ、ヴォルデモートさんの言う通りにまず大人しく部屋の中で」
「部屋の中で、何だ」
「……あー、と魔法の勉強を」
「言っておくがなまえ。俺様に嘘が通じると思うなよ」
「……ナギニと遊んでました」
「正しくはナギニを苛めていた、だろう」

ソファに座り込んでふかふかのクッションに顔を埋めた。う゛うと呻きをもらせばヴォルデモートさんの溜息。

「わ、私だって本当は気性のいい優しい美少女なんです」
「一つたりて共感できんのが悲しい所だな」
「心底哀れみに満ちた目で見るのを止めて下さい。せめて美少女ってとこだけでも共感してよ」
「それが一番疑心深い点だ」
「これほんとにトリップしてきた少女の待遇?なまえチャンは切実に逆ハーを期待してたのに」
「寝言は寝て言え」


でもよく考えれば闇の帝王と恐れられるその御仁の書斎(私物化した大部屋)のソファの上でぼふんぼふんしてる事実って結構あり得ない。我ながらちょっと引く。
一般の魔法使いに言ったとすれば大口開けて笑われるか顔を真っ青にして失神されるかのどちらかだろうな。そう思うと少し笑えてくる。だって、闇の帝王にも結構人間らしいところはあると気付かされたから。

「何をニヤけておるのだ、気色悪いぞ」
「そりゃ、レディに向かって失礼ってもんでしょ。第一これはニヤけてるんじゃなくて微笑んでるの!」
「…ハッ」
「まさか失笑で返されるなんて思わなかった」


だってナギニがあたしのことバカとかブスとか雑巾女とかボケナスゴリラとか言ってくるんだもん!人間様の格を見せつけてやったまでです。
そう言ってヴォルデモートさんの後ろを這っていたナギニを一瞥する。そこで彼が珍しく驚いたように目を見開いているのに気がついた。


「何です?そんな変な顔しちゃって」
「お前にだけは言われたくない」
「酷いよ卿」
「まあそんなことはいいとして」
「(そ、そんなこと…)」

「お前、パーセルタングが話せたのか?」

「パー…?卿が?」
「パーはお前だ!…パーセルダング……蛇語が、使えたのかと言っている」
「ああ、蛇語ね。え?知らん。あたし喋れんの?」
『こちらが聞いているんだ、馬鹿め!この阿呆が』
『また馬鹿って言ったァア!あたし今日その単語何回聞いたと思ってんスか!…て、あれ?これ…蛇語ですか?』
『そうだな……何故かは知らんが。お前の持つ魔力にはやはり見所がある』

なまえは暫く考えるようにして顎に手を置いた。ヴォルデモートは次に彼女の口から出る言葉を待つ。こいつは、これからの活動に使えるやも知れんと僅かな期待を抱いて。

「ヴォルデモートさん…もしかして、この力」
「ああ」
「ムカつく奴に幾らでも悪口言えますね」

パーセルマウスになりました。
(ダメだ。お前はだめだな、なまえ。全く使えん…ダメだ)(何だか知らんけど酷い罵られよう)
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