ちょっとばかし大きな戦闘があった。結果は当然キッド達の圧勝だったけど、船もクルーもそこそこの大打撃を受けてしまった。

「はーい、並んで並んでー!」

「うぅ.....痛ぇ、」

「こら!男の子が泣きべそかくんじゃない、うわ!傷口グロー!」

「ちょ、その反応1番傷つくぞ!」

「ごめん。目つぶってやるね」

「グア!!!傷に!杖が!!!」

「エピスキー(癒えよ)」

みるみるうちにグロい傷口が塞がっていく。周囲に集まっていた比較的軽傷な人達が、おお!と何度目にもなる歓声を上げた。

「いやぁ、ほんっとに便利なもんだな…...魔法ってのは」

「ナマエ嬢がいりゃあうちは敵無しなんじゃねーか!?」

「あたりきしゃりき!!はい、次キラー。腕見せて」

「いや、俺の傷は治すほどのもんじゃない」

「そんな血ダラッダラの人放っとけません。早く来て」

キラーの腕に杖を寄せる。
一瞬手を止めた私に、キラーは心無しか心配そうな目を向けた。マスク越しに、大丈夫かと尋ねられる。

「もちろん、ノープロブレム!はいおわり」

「.....すまないな」

「大丈夫だって!私戦闘じゃ役ただずなんだし、このくらいさせてよ」

人垣のあちら側で腕を組んでいるキッドを見つける。
「キッドは怪我してないの?」
声を張って尋ねると、彼は近付いて鼻で笑った。

「この程度の戦闘で怪我なんざするか」

「結構なもんだったけどね?」

「担ぐぞ」

言うや否や、キッドは私を担ぎ上げて甲板を颯爽と歩いた。クルー達の驚き顔がどんどん遠のいていく。
キッドはそのまま私を部屋に連れていくと、そのままベッドに降ろした。

「.........なんで分かったの?」

私はぽかんとした顔で尋ねた。

本当はもう立ち上がりたくもないほど消耗していたことも、たまに意識が遠のいていたことも、誰にも気付かれていないと思っていた。


「船長だぞ。なめんじゃねェ」

そう言って、キッドは毛布を私の顎まで引き上げた。

「俺達はお前を癒せねェ。だからテメェは、我が身を何より一番に考えろ」

言うが早いがさっさと部屋を出て行ってしまったキッド。照れたんだろうか。その優しさと不器用さに胸がきゅんと締まる。

キッドは私を癒せないと言ったけど、こういう優しさが実は本当に嬉しいのだと。彼はきっと気付いていない。本当に困ったせんちょ.....う.........ん??

「......きゅん?」
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