「最近オヘソのゲージがちっともたまらないなー」

「.......」

「甲板掃除とお風呂掃除とキッチン掃除とクルー全員分の洗濯でようやくハートいっこだもんなぁ。世知辛いぜー」

「.......」

「何かいいアイディアはないものか」

「.......」

「ねえキッド聞いてる?私わざわざキッドの部屋に来てキッドに相談してるんだけど何で無視なの?泣くよ?」

「俺は今忙しい」

「机に肘ついて目閉じてるだけじゃん。あ、もしかして何か悩みごと?私に話してごらん」

「うるせェ出てけてめェは!」

「断る!」

キッドの様子がおかしい。
わたしには悩むくらいなら全部吐き出せ的なこと言ってたくせに、自分はこれだ。やんなっちゃう。

(けどキッドの悩みとか多分船長的なあれやこれやだろうし、私がどうこうできるようなやつじゃないんだろうな...)

「.......そうだキッド!肩もみしようか」

提案すると、テメェ正気か、と言わんばかりの顔で睨み上げられた。

「キッドはリラックスできるし私もお得だし」

「と、得ってテメェ、そんなにまでッ.....(そこまでして俺に触りてェのか!)」

「えっ、えっ!だめ、なの?」

「だ!ダメとは言ってねェだろうが!!」

「何でそんなブチ切れ.....だ、だめじゃないなら、触るよ?」

「.....フン、好きにしろ」

椅子に座るキッドの後ろに回って、肩にぎゅっと力を込める。渾身の力を込める。砕けろと言わんばかりに指圧する。

(.......キッドの悩みってこの肩こりなんじゃない?もしかして)

「おいお前本気でやってんのか?お遊びなら止めちまえ」

「グッ、や、やるってるよちゃんと」

それにしても逞しい首だ。筋肉おばけ。
何かちょうどいい魔法はないものか、とは思ったが、特に思い至らず私はひーひー言いながらキッドの肩こりと対決した。15分も。


「もうむり.....手、手が痺れてる」

「.....多少マシになった」

「ほんとに凝ってたんだね。(ハート1個増えた!ラッキー)」

「こ」

「ん?」

「交代してやろうか」

「え?キッドが肩揉んでくれんの?」

「そうだ」

「どういう風の吹き回し.....というか、肩粉砕すると思うので大丈夫です。凝ってないし」

「いいから座れ」

「いやでも、凝ってな「座れ」.....はい」
top
×