「そういうことか」
私達を見下ろすキッドがぽつりと呟いた。

「いやどういうこと?っていうかキッド.......何その形相、この世の終わりかな」

「終わるのはテメェの生涯だ。言い残すことはあるか」

「あるよ!?!?何で私の生涯ここでジ・エンドなの!?」

「俺の大事な右腕に襲いかかってモノにしようとしてんじゃねェか。当然、地閻怒だ」

「してないし当て字が物騒すぎる!地獄で閻魔大激怒してそう!!」

「.......キッド」

目が据わりきってるキッドに向けて、キラーが半身を起こしながら言う。

「俺は大丈夫だ。.....こいつは.....咎めないでやってくれ」

「ちょっとねえキラーさん何で何かあったっぽく言うの?誤解生むじゃん……ほらほらほらァ!!!キッドが(ギリッ)ってなってるじゃん!早く誤解といて!!」

キラーは私の耳元に顔を寄せてこっそり呟いた。
(あの写真を隠したいなら、ここは俺でも襲っておいて、あれは欲求不満の症状だとかなんとか言っておけばいい)
(嘘でしょその後の私に残された道険しすぎない?一生変態の汚名背負って生きていくしかないじゃん!!)

「何コソコソやってんだテメェら」

ど、どうしよう。もう時間無い。
そもそも欲求不満ってなに、どうやんの!これまであんまり不満足に思ったことないタイプの欲求なんで分かんないんですけど!!

「わ、わ、わわわ.....わたし、じっ実は欲きゅ...」

無理だ言えん!
仕方なく行動でアピールすべく、キラーのシャツの襟元に指を触れさせてみる。太い首と浮いた鎖骨、逞しい胸板がこんにちわしている。えっ、え、男の人の身体ってこんな逞しいの?ハリーなんて(この前偶然着替えシーン覗いちまった)言っちゃなんだけどモヤシだったよ!?
全身火の玉のごとく赤くなった私は、すくっと立ち上がって自分に杖を向けた。



「.......アイツ逃げやがったな」

「キッド.....ナマエが消えたがこれは」

「目くらまし術だ。それよりキラー、説明しろ」

「ナマエが俺に襲いかかってきた動機についてなら俺からは何も」

「違ェよ!ーーーあいつが何を隠してるのか、それについてだ」

ニヤリと悪党さながらの笑みを浮かべるキッドに、キラーは心の中で少女への謝罪を送った。

(すまない、ナマエ。
俺たちの船長は見かけ以上に鋭いらしい)
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