もしかして、キッドは私の事もそんなに信用はしてないんじゃないかな。そんなふうに思ったのはつい先ほどの事だけど……ええい、いつまでも引きずってられるか。
(私だって別に、心底信頼してるわけじゃ、ないし)
………嘘吐きました。ごめんなさい。
本当はもう結構キッドを信頼してる。非難したいところもわりとあるけど、キッドの強い部分を知ってしまえば、優しいところを知ってしまえば、信じてついていきたいと思えてしまうのだ。―――だから、私も信頼されたい。

裏切りとは一番遠い場所に居て、たまにはキッドを守ってあげる存在になりたいと思うのだ。


「だからキッド!私に任せてついといで!!」

「寝言ほざいてねぇで前見て歩け。…おら、段差!」

「あうっ」
よろめいた私の腕を掴んで転ぶのを防いでくれたキッド。

「危ねェんだよ、ちゃんと俺の後歩きやがれ」

「う…うん。………」

守ってあげる存在にはまだほど遠い様子だ。頑張ろう。
一息ついて気持ちを入れなおし、とりあえず目の前に続く道を見る。草木の生い茂った山は想像以上に急な斜面が続いていて、気を抜けばさっきのように落下の危険がある。

「これ、キッドが滑ったらあたしもろとも全員オワタだね」

「滑らねェしうるせえよ。大体、てめぇ何で自力で登ってんだ」

「……おんぶしてくれるの?」

「何でそうなった!――箒使えばいいだろうが、飛べんだからよ」

「!!!!」

ということで、一人山登りから離脱して上空へ。
キッド達の集団はぞろぞろしているが、木々の生い茂るこの山の上空からだと直ぐに分からなくなってしまいそうだ。そのために、キッド達に30分おきに彩光弾を打ち上げてもらうことになった。


「開けた場所、怪しい場所があったら即報告しろ!!」

「はぁーい」

「一人でウロウロ降りるんじゃねぇぞ!」

「オーケェママ!」

「てめぇ後でしばくからな」

さっき合流したクロ子と共に山全体を見下ろせるほどの高さに登った。
「こうしてみると大きな山だなぁ」

山の向こうの町は全体的に白く、まだ東の方にある太陽に反射した海はコバルトに輝いている。


「美しいねえ、クロ子」



ジミールおじさんの話が本当だとしたら、遠い昔、ここには私と同じ魔法使いが生きていたんだ。きっとこんなふうに空も飛べたに違いない。
――皆、どこへ行っちゃったんだろう。

なんとなく服の裾を捲ってハートのゲージを確かめたけれど、魔力は昨日船室の床を掃除した時の2/1個しか溜まっていない。
(……お宝発見が『イイコト』にジャッチされるといいんだけどな)
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