ほんっと最低!男は皆狼だからお前気をつけなきゃ襲われちゃうぞ★ってかなりえげつないかんじで教えてくれたくせにあんなこと言うなんてマジ最低!キッド超最低!あのド変態野郎いつか刺されろ!バーカバーカ、うんこ!


「へい!へい!よってらっしゃい見てらっしゃい!」

「んぁ?……ほああああああ!!」

「ハァイ!一名様ご案なーい!」

「いらっしゃいましたー!うっふぁーい!」

くそう、誘われてしまった……!さすがお菓子の国!色取り取りのケーキと鼻腔を刺激する甘い香り!!店内に入れば、そこはもう、え……ちょ、あんたこれハニューデュークスと張れんじゃないの?と疑ってしまいそうな彩り豊かなデザート達。もーあいつもこいつも可愛いんだからっ!ぜーんぶナマエちゃんが食べちゃうかんね!


「「覚悟しとけバカヤロウ!!」」

声がハモったかと思えば、私の隣の席には中年くらいの男性がいた。私と同じように目を輝かせ、じゅるりとよだれをすすってるところを見る限り、多分彼もまたスイーツハンターだ。ライバル……いや、同志だろう!

「嬢ちゃん、このへんじゃ見ない顔だな」
店内にいるにもかかわらずコートを着たままで、皮の手袋すら付けっ放しの不思議なおじさんは、目をキョロキョロとせわしなく動かしている。まあ、このスイーツの楽園ではそれも頷ける。


「時空と海を渡ってきましたからね」

「へー、そうなんだ。あ、兄さんこっちにそのミルフィーユ」

「(信じてないな)あたしにはモンブラン」

「もぐ、んぐ、にしても、よく食うな嬢ちゃん」

「もっふもっふもももふぁ」

「それがわたしのポリシーだ?よう分からんが…―――気に入った!さあどんどん食え!!ここはおじさんの奢りだー!」

「ごくん、まじで?おじさん!ありがと次あたしレアチーズケーキ春の果実添え!」

「ここほんとスイーツパラダイスだよなっ!俺にはババロアくれい!」

「スイパラ最高!」

「FOOO!!」

何やらテンションの高いおじさんと意気投合していくうちに、おじさんはこの島に住んでいるということが判明。今日は定休日なんだとか。

「お嬢ちゃんは旅人かい?」

「あたし、魔女兼海賊」

どうせ信じないだろうと本当のことを言えば、意に反しておじさんは目を丸めた。

「海賊はともかく……魔女?はここ最近、とんと見なくなったもんだが」

「…―――ええ!!??もしかして、昔はこの世界にも」

「魔女か?ああ居たぜ。この島は魔法使いの出入りの多い場所でな」

こっちの世界に来て初めての、魔法使いに関する情報。
私はドラゴンフルーツのジュースをテーブルに置いておじさんに詰め寄った。


「ねえ!その魔法使いたちはどこに行ったの!?どうしてこの島には魔法使いが」

「お、おいおいお嬢ちゃん、俺は情報屋じゃ無いんだぜ」

「……そっかぁ、知らないのね」

せっかく新しい情報が掴めるかと思ったのに。落ち込む私を見て何を思ったのか、おじさんはニッコリ笑って指を立てた。手袋の甲の紋様には軽く見覚えを感じたが、場所は確定できなかった。

「じゃあ、関係性があるかは分からんが、この島にある伝説の話をしてあげようか」

「伝説?」

「その代り、お嬢ちゃんが魔女だというなら何か魔法を見せてくれよ。そうしたら、教えてあげてもいいぜ」
ケーキを頬張りながら告げられる。私が迷う事は無かった。
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