ハニートラップ


お宝や敵船などの情報収集は長期戦になることが多いらしい。情報を持っていて、しかしそれに興味が無い、または等価交換で情報を売ってくれるものを探すのは骨が折れるんだそうだ。

「少なくとも5日はかかるだろうな」

「そんなにするの!?」

「小せぇ島だが住人はそれなりだ。普通なら、全員吊るして回っても2週間はかかるぜ」

「ぜ、全員吊るす!!?だめ!」

勢い余って立ち上がると横からキッドに耳を引っ張られた。

「でけェ声出すな」

「う…ぐっ」

「…俺達は素人じゃねェんだ。情報を持ってる奴とそうでない奴の区別くらいつく。――信用足り得ると思う情報がいくつか集まれば、そこでやっと動ける」

「…なるほどねえ。」
思ったより慎重なんだ、と、ここはかなり意外なところである。

「ねえ、情報ってどうやって集めるの?」

私の問いかけに、キッドは意外そうな顔をして首をかしげた。

「何だ。海賊稼業に興味でも湧いたか?」

「違うわ!…ただの好奇心」

「フン、つまらねェ。………でかい街には大体情報屋ってのが潜んでるもんだ。そいつを探り当てる。もしくはこの島に長く住んでる奴に、宝の在り処、もしくはそれに関しての知識を持ってる奴を吐かせる。」

「こわすぎる…その人が何も知らなかったらどうすんの!」

「関係ねェよ。そいつの口から出た別の人間を探して、見つけて、吐かせて、それを繰り返せば自然と中枢に近付けるもんだ。――だからそれなりに時間食っちまうんだよ」

「強引すぎ!やっぱ私海賊やめますっ!」

「させねぇよ。」
愉しそうな顔しやがって!
「私は良い事したいのにぃぃ!」
このままじゃだんだんキッドの悪っぷりに侵食されてっちゃうよ!と喚けば、上等じゃねーかと笑われた。

「安心しろ。俺が立派な海賊に育ててやるぜ」

「絶対いやだからね!」

「他には……アア、お前でもできそうなのがある」

私にもできる、と前置きされたのが少し気になって耳を傾ければ、隣に座っていたキッドが急に私の腰を掴んで引き寄せた。何の前触れもなく縮んだ距離に、私の初心な心臓は悲鳴上げっぱなしだ。

「ハニートラップ、なんてどうだ?」





「頭!!情報が一つ………ってどうしたんスか!?頬に真っ赤な手形が…」「す、すげぇ痛そう…」
「(あのクソアマ……冗談に決まってんだろうが。)……本気で叩きやがって」
「え?」
「オイ。ナマエ探して来い、縛ってでも引きずってでもな。…思い知らせてやるあの糞魔女」
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