「バイオレット・スパークか……。また大物の名前が出たな」
そう言うキラーの声にも僅かに嬉々とした弾みが伺える。他の船員に至ってはスパークの財宝と聞いた途端に歓声をあげる始末だ。


「それで!お頭ァ!お宝はどこにあるんですか!?」

「島の反対側に一艘海賊船がありましたぜ…!」

「そいつらに先越されねぇうちに早いとこ宝探しに行きましょう!!」

「いやむしろソイツ等先に沈めましょうか!?」

いきり立つクルーを眼光のみで黙らせたキッド。
「浮かれるのはまだ早ぇぞ」
さっきまで自分もはしゃいでたのに、という発言はひかえておく。さすが空気読めるわたし。

「まだ明確にあると決まったわけじゃねェ。まずは情報を集めろ!ヒート、ワイヤー、お前らは数人連れて島の西側をあたれ。キラー、東はお前に任せる。残りは船番と敵船の見張りにつけ!」

「キッド!あたしは!?」

「俺と来い。」


FOOOOO!何か分かんないけどキッドと行動を共にするのが一番面白そうだ!ごめんねキラー!船長とっちゃって!ウフ!
テンション上がり過ぎて心で漏らした言葉は途中から声に出ていたらしく、キラーには結構な力で鼻を摘まれた。キッドは呆れたのかもはや何を言う気もないらしい。


「ナマエ、キッドの傍に居るって事はこいつを護らなきゃならないって事だぞ。分かってるのか?」

「分かってるって!ご安心を!皆のベイビーは私が命に代えて守るでいででででっ」

「テメェに護られる程弱くねェんだよ、こっちは。キラー、余計な事言ってんな」

「すまない。少し苛めたくなった」

「鼻!はなつままんといて!高くなっちゃうから」

「結構な事じゃねェか。おら、美人にしてやるよ」

「もう美人ですなんちってー!あでへででででっごべ、ごべんなさい!ちぎれるっちぎれるからぁ!!」

キラーめ!絶対さっきの仕返しだろ…!
後でそのマスクの穴生け花に使ってやる、と固く誓って船を下りる。


「ところでキッド」
絶対に赤くなっているであろう鼻をさすって私は尋ねた。

「今はどこに向かっているの?」

「あ゛?決まってんだろ、そんなもん」

ニヤリ、とどこまでも悪党らしい良い笑顔。

「酒場だ」
「…………キラー――――!!!」


(皆に働かせて自分はお酒飲んで綺麗なお姉さんにちやほやされようとしてるんだ!さいていだあああああ!)
(黙れバカが。俺がフラフラしてたらアイツ等は得た情報をどこに集めりゃいいんだ)
(!!)
(分かったらとっととついて来い。喚くんじゃねェぞ)
(………はい)
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