秘宝の噂



「誰が教えるか」と最初は口を割らなかった男だったが、私が杖をチラつかせて「体中から蛆虫が湧き出る呪文と、針がいっぱい刺さる呪文どっちがいいかなぁ」(※適当だよ!そんな怖い呪文知らないし、針がいっぱいとか説明からして適当だよネ!ていうかアレ?あたしもしかして海賊になじんでね?だめじゃね?これ)と言うと、真っ青になって物語の全貌を話し始めた。




「…ミスター・バイオレットスパーク?」




私が首をかしげる隣で、キッドは目を大きく見開いた
胸倉を掴みあげられている海賊さんAだかBだかは「へっへっ」と嫌な笑い方をしている。


「流石に知ってるみてぇだな!」

「ねえ、キッド…ミスター・なんちゃらスパークって…一体何者?必殺技みたいな名前だけど」

「…モンブラン・ノーランド、フィッシャー・タイガーに並ぶ、大海賊時代最高の冒険家だ」

モンブランさんも、フィッシャーさんも知らないけど…。
キッドは意外と博識だなと思いました。





――ミスター・バイオレットスパークは昔、とある一国を治める王族の人間で、莫大な資産家であったとか。しかしある日突然、城中の人間たちを一晩で皆殺しにし、城にあった財産を国中にばらまいてまわる凶行を犯す。
貧困に苦しむ国民たちは救われたが、バイオレットスパークは大犯罪者として国を追われた。そうだ。


「じゃあ…凶悪版鼠小僧みたいなもんかな…?バイオレットスマッシュ」
「スパークだ」
「へっへ…その話にはまだ続きがあるんだぜ」
「何か喋り出した!」


手下Aが頼んでもいないのに語りだした内容は、こんなようなものだった。

――しかし、ミスター・バイオレットスパークが国にばらまいた分を差し引いても、彼の手元に残った財産はとてつもない額であった。金に関心を持たないバイオレットスパークは、冒険の旅の途中でそれらを分散し、隠した。

その場所の一つが、この島、メルヴェイユ。


「奴は甘党だったらしい」

「キャー!キッドあたしバイオレットスパイダーと仲良くなれそう!」

「スパークな」

「とにかく!お前ら!俺達の邪魔するようなら、ここで消してホガァッ」

「…。」何か喋っていた彼を拳で沈めたキッド。
どさっと荷物のように道端に捨てて、キッドは船のある方へ足を向けた。


「ナマエ。街に居る奴らを船へ呼び戻せ。作戦を立てる」

「…」

「…チッ!メシでも何でも、終わったらたらふく食わせてやる!」

「いやっほーい!!約束だよ、キッド!――アクシオ、箒!」秒も待たずして箒がこっちへ向かってきた。それに飛び乗り、ひとまずクルーを探しに街の上空へ。

「キッド海賊団のみなさーん!!!宝探しに行きましょーっ」

実は私、少しわくわくしているよ!
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