偉大なる航路



「今日も今日とて快晴〜!るんたったー!るんたったー!洗濯びーより」


洗濯かごにモリモリ詰まれた洗濯物を甲板に運ぶ。皆育ち盛りだからってこんなにモリモリしなくてもよかろうに、と内心不満たらたらである。つーかこれ洗うのも大変だったんだよ!?血まみれだったり穴だらけだったり。過労の割にオヘソのハートゲージは増えないし。


「あれ。ナマエ嬢、この前の戦闘ん時の服洗ったのか!?」
甲板に、物干し代わりの縄を張り巡らせてくれていたヒートは目をまん丸くさせた。

「うん!マックス汚かった」

「ギャッハハハ!そりゃそうだ!!」

「え」

「今度からは血まみれで穴だらけでボロボロでもう着れそうにねーやつは捨てちまっていいぞ!頭も言ってたし」

「ハァ!!?早く言えし!!」

「つーかアレを洗う気になったのが驚きだぜコッチは」

洗濯かごを甲板に置いて、ひとまず地団太を踏むことにする。だって納得できん!

「あたしだって洗いたくなかったわ!っていうか一つ言わせて!ボロボロで穴だらけな服はダメージファッションなのか単なるダメージなのか!区別つかんわバカタレ!!」

「何でだよ!分かるだろフツー!」

「わかんないよ!あたしがどんだけ困ったか…!無駄にスケスケエロエロな服着やがってこの変態奇抜ファッション海賊だ、んふぉぁあッ」

「甲板でデケェ声出すな」

「キッド!」「頭!」「っていうかキッド痛い痛い痛い!頭ちゅぶれる!!」

「変態奇抜ファッション海賊団?」

「うそうそ!うっそびょーん!そのコートかっこいいほんと!いつも裸エプロンと同じじゃねーかとか思ってないから!けっして!」


暫く離してもらえなかった。
クソ。



「今から洗濯干す気か?」

去り際のキッドが呆れたように言うので首をかしげる。ヒートは縄を張り巡らせて仕事を終えたのでさっさと自分の持ち場に戻ってしまった。(私を手伝ってあげようという気はこれっぽっちもないらしい。)

「そうだけど」

「ハッ、止めとけ止めとけ。」

「え?なんで??」

「今から大シケだ。二度洗う羽目になりたいなら別だがな」

それだけ言ってカツカツと戻って行ってしまったキッド。
大シケ?つまり…嵐が来るよ、みたいなことか?


「…ってこんなに晴れてんじゃんか!!」

キッドのやつー!私のおどかして仕事をためさせようってハラだな!?そういう意地悪だな!?まったくオチャメも程々にしてほしいわ。私は忙しいんだから!
…私はキッドの言うことを聞かなかったのである。
それを心の底から後悔したのはほんの十数分後のこと。





「野郎共―――!!マストをたため!!船を波に立てろ!!針路を逸れるんじゃねェぞォ!!」

「おおおお!!!」

「………キラー!ナマエはどうした」

「甲板で転がりながら洗濯物を取り込んでいる」

「(言うこと聞かなかったなあのバカ)」

「手伝いに行くか?」

「ほっとけ。イイ薬だ」



(…グランドラインン…ッ)ギリッ
(ほらほらナマエちゃん。洗濯物塗れでそんなおっかねー顔されても困るから。着替えといで)
(わーん!ありがとうワイヤーさん…チクショーキッドめ!文句言ってやる!)
top
×