「じゃあ、今私達が探してたお父さんって…」

「俺の二人目の父さん」

「ま…マジか……」

「この前父さんが死んで、俺は今の父さんに預けられた。」

この島へは二日前に引っ越してきたらしい。
理由は知らない、とキット君は言った。

「こんなところウロウロしてねェで家にでも戻ってりゃいいだろ」

「道なんてわかんねーよ!…それに」

「…それに?」

「もしかしたら俺、捨てられたのかもしんねーんだ」

「捨てられた?」
広場がだんだん近くなっていくにつれ、キット君の歩調は遅くなっている。


「新しい、父ちゃんも、母ちゃんも、弟も、優しくて好きだ。最初はやだったけど、今は普通に「とうちゃん」って呼べるようになったし……。だけど、たまに不安になった。

――本当は俺はここに居ちゃいけねーんじゃねーかって」

「…くだらねェ」
キッドが吐き捨てると、彼はすかさずそれに噛みついた。

「ッ何だと!!」

「ガキがくだらねーこと気にしてんじゃねェって言ってんだ」

「くだらなくなんてねェ!!」

「くだらねェだろ!」

「くだらなくねえ!」

「ねえ、そっから先に進まないの?」

「「うるせェ!」」

「やってられん!あっ」

キット君は私の手を振り払って立ち止った。

「俺はバカだから、子供だから、父ちゃんたちの優しさが!愛情が!本物かどーかなんて見ぬけねぇよ!!」

「…キットくん」

「もし家に戻っても誰もいなかったら!?このまま探し続けても誰にも会えなかったら!?…―――みんな俺を置き去りにして、また別の島へ行っちまってたら!?」

キッドの舌打ちが耳をかすめた。そして私が止めるより早く、キット君の胸ぐらを掴んで持ち上げる。
3メートル近い視界は、きっと怖いに違いない。

「ちょっ、キッ」

「そんときゃ…―――」
キッドの顔は真剣だった。
子供だからと適当にあしらうような雰囲気はどこにもない。真っ直ぐ。真っ直ぐ。

「そんときゃ、怨みを糧に、テメェで生きろ!!」
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