「死の呪文は、名前の通りだよ。」

魔法界でも防ぐ術は本当に稀で、力の強い魔法だったから対抗する事すら難しい。ほとんどの人は成す術もなくその呪文に当たり、命を落としてきた。
さらに言えば、ここには魔法を使える人は私以外誰もいない。
超人的な能力があっても、死の呪文に対抗できるものはきっと一つとしてありえないだろう。あるぇ、わたしなんか、すごい危険な存在じゃね?殺戮兵器にもなり得ちゃうよコレ?

「つまり、その呪文が人に当たりゃ、死ぬんだな」
「……」

私は答えなかった。
キッドはそれを見越したように頷いて、「それだけは絶対に使えるようになるな」と鋭く発した。
頷きかけて、耳を疑う。
――ぜったいに つかえるようになるな……?

「な、なんで」

「あ?」

「だって…私がこの魔法出来るようになったら、キッド誰にも負けないのに…」
だから私は、キッドは「まずそれを習得しろ」と言って来ると思った。(もし言って来たら、今までの事は全て忘れて船を降りようと思っていた。の、に)


「見くびんじゃねェぞ」

「え…?」

「"無敵"ほどつまらねェもんはねえ。

 誰にも防げねえもんの、誰にも反撃できねえもんの、一体何が面白ェんだ」


「…キッド」

「それと」

「うおっ」

ベッドの淵に座る私の肩を押してシーツに転がしたキッド。
いかにも不機嫌そうな顔で私に跨ると、すっと首元に手をあてがった。体重を加えられたらキュッと首がしまるところだ。…まさか殺す気じゃないだろうな……。
私が怯えたのが分かったのか、キッドはニヤッと自信ありげな笑みを顔に浮かべて見せる。




「そんなもんなくたって、俺は誰にも負けねェよ」

か、
かっけえ…船長…!

(つーか早く返せ)
(は?ああ、ゴーグルね。でも髪下ろしてるとイケメンだねキッドごはっ)
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