彼を知らないか



「ここが頭の部屋だ。用がねェ時は立ち寄るな」

「OK(極力近付かないようにしよう)」

「お前の部屋はこの隣だ」

「お隣かよ!」

「俺達で昨日掃除した。有難く思えよ」

「へー、なんだいいとこあんじゃん!おじゃまします、マイニュースイートルームって汚っ!」

「あ?」

「何人で掃除したのかしらないけど汚い!逆に!足跡いっぱいほら!」

「じゃあ魔法で何とかしろよ!」

「逆ギレだと…。じゃあ良い事させろ!もう魔力のストックないんだ私!」

「俺今肩こってるが」

「よかったらどうぞ、じゃないわ!スケールが小さい!そんな塵じゃ積もるまでに100年かかっちゃうよ」

「文句の多いクソガキだ。投げ飛ばしてやろうか」

「おいたはいやん!」

「…人の部屋の前で何してんだテメェ等」


「あ、おかえりキッド!いたいっ」

「船長つけろ!敬語も!…おかえりなさい、頭」

「あァ」

「乙女たたくとか紳士失格!今度からあんたの名はドレッドファイヤーだ!」

「俺達は海賊だ、紳士じゃねェ!俺の名前はヒートだ!」

「アッツ!ほら!またすぐ火吹く!だから野蛮だ何だって言われるんじゃない」

「煩ェな」

キッドは呆れたようにブツブツ言いながら自室へ入っていく。私を掴んで。

「いででで」

「煩ェ」

「なんてこった」

「テメェには聞きてェ事が山ほどあんだ。たっぷり話してもらうぜ」

「ヒートさん!ヒート様助けて!…おいシカトぶっこいてんなよドレッドこら!」「あ?」「すいません!またあとでね!」

バタン
ここで一句。

「無情にも バタンとしまった ドア」
「糞が。」

キッドめ、相変わらず口が悪い。思いつつも船長室とやらを見渡す。さっき見た私に宛がわれた部屋よりずっと綺麗。しかも部屋の片隅にごそっと無造作に置いてあるのは財宝の山。「この前敵船から奪った。鑑定中だ」といらぬ補足をされる。私本当にこの船に乗っててホグワーツに帰れる日来るのかな。


「ここに座れ」

「ハハハ、冗談よしこさん」

「チッ」

「はーいただいま座りまーす!」

私は言われた通り大きなベッドのふちに腰かけた。キッドは2つのグラスにお酒をついで、私に差し出してきた。
「…や、まだ未成年だから」

「あ?昨日飲んでただろ」

「アレはノリと勢いで。つーか急性アル中とか嘘でしょ?」

「ンなくだんねェ嘘吐くか」

「…」

未成年で急性アル中…。
ホグワーツに帰れる日は、程遠そうだ。
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