挑戦者


「昨日は泊めてくださってありがとうございました!ものすごく助かりました」

「ハッハッハ!いいんだよ気にすんな!姉ちゃんはちょっとした英雄だからな」

豪快に笑ったおじさんはこの酒場のマスターで、私が男の子を助けたシーンを目撃していたらしい。泊まる場所に困っていると言ったらうちは2階が宿だからと一晩泊めてくれたのだ。


「お嬢ちゃん暫くこの町にいるんだろ?」

「まあ当分は」

「ならまだうちにいるといい!うちのカミさんも大層嬢ちゃんを気に入っちまってね」

「ほ、本当ですか…?ありがとうございます!すごく、たすかります!」

「いいんだよ!はっはっは」

「あ、じゃあ私お仕事探してきますね!夕方には戻りますから」


な、なんと暫くの宿が確保できてしまった!チャンチャカチャーン!
でもいつまでもお世話になるわけにはいかないから、ちゃっちゃとお金稼げる場所探さないとね。…おっつ



「よォ」

「おっかしーなー」

「何がだ」

「昨日素敵にお別れしたからもう会わないもんかと」

「一方的にだろ」

目の前に立ち塞がったのは赤髪の海賊、ユースタス・キッド。

「ユースタスさん」

「キッドだ」

「キッド。私はっきり言わせてもらうけどね」

「俺の船には乗らねェんだろ?昨日聞いた」

「…じゃあ」

「お前がその気なら攫うまでだ」

「超物騒!ああ、もう、海賊ってみんなこうなの!……ッハ」


―――次会った時ゃ攫われねェよう気ィつけろよ、はるか?

ドフラミンゴの言葉が蘇った。
「…こういうことだったのねー!!」

「何お前」

「私を攫うってんなら容赦しないぜ!なんと、私はもう既に、…ひーふーみー」

「…」

「3つの呪文が使用可能なのだー!」

「昨日と変わってねェじゃねェか」

「あれからいいことしてないもんで…へへ」

頭をこつんと叩く仕草をすればすごく怪訝な顔で見られた。あいたたた…

「今日は一日お仕事探して回るんだから、ほっといて!」

「ほォ」

「…何さ」

「こんな小せェ島でお前に合った仕事が見つかるとは思えねェな」

「そ、そんなのやってみなきゃわかんないし!」

果てしなく馬鹿にされた気がして言い返したら、キッドは「じゃあやってみろ、俺もついてってやる」とありがた迷惑な事を言い始めた。いや有難くないな。迷惑迷惑な事を言い始めた。

「海賊を武装していったら間違いなく追っ払われるよ!」

「チッ…文句の多い女だ」

「なぬっ」

「じゃあ遠巻きに眺めててやる。幸い俺は今日一日暇だからな」

「…」
こうして、私の仕事探しとキッドの暇つぶしは始まったのだった。
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