ゆらゆら、揺れている。 なにかわからない。 あれだけ苦しかったモノが全て消えていく。 深く重い憎悪も、確かに感じ取った破裂した内臓の痛みも、全て。 ゆらり。 痛かった。 苦しかった。 悲しかった。 秀吉様を討ったのは家康で、それを止める事の出来なかった私は、秀吉様も家康もどちらも失ってしまった。 私は、降り頻る冷雨の中ただ叫ぶことしか出来なかったのだ。 憎かったものは、家康じゃない。 何も出来なかった私自身が、いちばん。 でも、本当になんなのだろう。 恐ろしく優しく静かで、暖かい。 ここはどこだろう。 確かに私は、家康に殺された。 秀吉様も半兵衛様も刑部も、みんな私を置いて逝ってしまった。 金吾には裏切られ、長曽我部を騙し、そして家康に殺された。 確かに、その筈、だ。 『三成、』 『三成くん』 ああ、懐かしい声だ。 何よりも美しい貴殿方の声を忘れた事など、一度だってない。 『三成、早に起きよ』 刑部。 貴様もそこにいるのか。 なんて幸福だろう。 夢でも見ているかのようだな。 『違うよ、三成くん』 『我は死んでなどおらん』 『三成、早に起きよ』 ――ああ、そうか。 今までのが全て夢だったのだな。 そうだ、 秀吉様が死ぬわけがない。 半兵衛様とともに、天下を治めるのだから。 そして、私は家康に裏切られてなどいないのだ。 また、秀吉様の名の元に豊臣の為にともに戦える。 そうだ、夢から醒めたら少しは素直になってやろう。 あんな夢を二度と見ないように。 ずっと、愛していたんだ、家康。 夢から醒めたら抱き締めて ごめん、三成。 本当は、ワシはずっとお前が。
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