※青峰視点。
ヒロイン台詞が、ひらがなばっか。
「…、バカじゃねーのコイツ。」
部活ダリィ。今吉ウゼェ。
つーわけで、放課後の練習はサボって、さつきに捕まんねェうちに家に帰ってきたわけだが、向かいの家の玄関前で気になるモンを見つけた。…紺色のダッフルにオレンジのスカート、そしてチェックのマフラーを身に付けたちっせーガキ。
うちの向かいに住んでる名字さんところの名前だ。
普段なら目敏く俺を見つけて抱きついてくるクセに、そんな様子もなく、とにかく大人しい。こっちにとっちゃあ、面倒事が無くて好都合なんだが、どうも気になっちまって俺は様子を見るために名前に近寄った。
そしたら目の前のガキの体がカックンカックン揺れて。一瞬マジでビビったけど、よく見りゃただ寝てるだけだった。
そして、冒頭の台詞に至るわけで。
風は強いわ気温は低いわでとにかく今日は寒ィ。
…こんなとこで寝てたら当然風邪引きかねねェよな、ったく…あ"ー…めんどくせぇ。
寝ているのに気づいたからには放っておくわけにもいかねェ。俺は名前の体を軽く揺すった。
「オイ名前起きろ!!」
「…すー…」
「起きろって!!」
「……んー…あー…?、だいちゃんだー…おかえりぃー…」
「おかえりーじゃねェよバカ。寝るなら家入って寝ろ。こんなクソ寒い時期に外で寝てたら風邪引くだろが。」
つーか、よくこの寒さで寝れたな…と呆れて溜め息をつく俺に対して、目を覚ましたばかりの名前は口を尖らせて「だってー…おうちあいてないもん。」なんて言い出した。
名字さん家のオバサンはいつもこの時間なら家にいるはずだが、今日は居ないらしい。
事情を聞けば、「かわしまのおばちゃんとやまもとのおばちゃんとごはん」とか。
…誰か知らねェけど多分オバサンの友達かなんかだろう。
「じゃあ鍵はどうした?朝持たされたろ。」
「んー。おうちにわすれちゃった。くつはくときにね、おいたのわすれちゃった。」
コイツ、全く成長しねェ!!!!
…というのは、前もこんなことあったからだ。
尤もそん時は鍵じゃなくて、体操服だったが。
まあ俺がオバサンに頼まれて小学校まで届けにいったのはそんな古い記憶じゃねェ。
つか、小学校の近くでは、くっちゃべってたババアどもからは変な目で見られるわ、巡回中の警官には不審者に疑われるわで…あの日は最悪だったし。
…もう小学校なんかに忘れモン届けにいったりしねェ!!
「お前なぁ…俺この前体操服届けに行ったときに言ったろ。もう忘れモンしねェように、しっかり家出る前に確認しろよって…」
「いったー。」
「なんで同じパターンでよりにって鍵なんか忘れてくんだよ。」
「だってぇー…」
「だってじゃねェよ。だってじゃ。」
「うっ!!だいちゃ…いたいっっ!!」
俺の心境も知らず、悪びれた様子のない名前に、また溜め息がでる。
なんかムカついたから鼻つまんでやった。
「おっ。ぶっさいく。」
「はらしてぇー!!」
「ちょっと反省しろ。」
「したしたぁー!だからはらして!!いたいのーっっ!!」
ぜってー嘘だ。
つーか仮に反省しても、多分3歩歩けば忘れる。コイツの頭の構造はニワトリに近いし。
…。あーあ、面倒くせぇ。
折角部活サボってダリィ思いしなくて済むと思ったのによ。
「…ったく、バカなヤツ。」
「うー…バカじゃないもんっ」
「唸んなアホ。」
「アホじゃないもんっ」
「んじゃマヌケだ。そうでもなけりゃ、んなとこ眠りこけてねーよ。……オラ、とりあえず立て。」
「えー…でもいまたったら風ひゅーってふいてきてさむい!!」
「そんなの一瞬だろうが。…ほら立てってちょーどうちにココアあっから今なら作ってやるよ。」
「えっ!!」
「おう。母ちゃんが知り合いから貰ってきた超旨いヤツ。そういや生クリームもあったし…ココアの上にのっけてやるぜ。」
「わー!!だいちゃんふとっぱら!!だいすきっ!!」
「はいはい。じゃ、早く立て。俺も寒ィんだよ。」
「はーいっ!!」
ダルいことは極力やりたくねーし、ガキの面倒なんて柄じゃねェ。
つーか、すっげー面倒くせェ。
でも、ニコニコ笑って懐いてくるコイツの面倒見るのは、意外とそう悪いもんじゃねェ。「だいちゃん、はやくはやくっ!!おうちはいろー!!」つって、グイグイ俺の手を引く名前を見てしみじみそう感じた。
「…?!(げっ。鍵開いてねェ!!つーか俺も鍵ねェし!!)」
「…?だいちゃん、どうしたの?」
「なっ、なんもねェよ!!なんもねェ!!」
「ふーん。ねーねー。おなかすいたぁー!!なんかたべたいっ!!」
「……おー…。じゃあ名前、予定変更だ。マジバでも行くぞ。好きなもんなんでも買ってやる。」
「ほんとっ?!」
「マジマジ。…500円までだけど。」
「やったあー!!」
「良かったなー…(くそっ!!なんでウチの母ちゃんまで居ねェんだよ!!)」
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ずいぶん前に友達からいただいたネタ。
ちっさい女の子と青峰がならんでるってすごくいい。
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