しょーと | ナノ






!やっぱりモブ痴漢注意
!花宮視点で、前回つづき。
!ヒロイン出番なし。




テスト前で朝練がなく、いつもより遅い電車に乗れば、偶然クラスメイトの名字が痴漢に遭っているところに遭遇した。

名字とは席が近いから多少話すことはあるものの、本当にただそれだけの関係で、俺からすれば何一つ興味を引くような要素のないつまらねェ女にしか見えない。

そんな奴が痴漢に会おうがレイプされようがこっちには一切関係ねェし、普段なら遠目でその情けない姿を眺めて、面白がってただろう。
ただ今日は妙に気分がよくて。
ちょっと慈善事業でもしてみるかと、気まぐれにアイツに声をかけた。
勿論、わざわざ降りたこともない錆びれたこの駅で下車して、クソ野郎にいつも通りの澄まし顔でヤツの罪を問うてるこの状況だって、気まぐれの延長線に過ぎないのだ。


「おじさん貴方、名字…いや。さっきの彼女の事、触ってましたよね。」


置いてきた名字は恐らく駅員室に行ったとでも思ってるだろうがそんなとこ連れていけば、こっちまで事情聴取だなんだと面倒臭ェことになりそうだしそんなのはゴメンだ。
だが、何も無しで捨て置くのも気に入らない。
猫を被ってれば、痴漢野郎は当然俺の本性なんか見破れるはずなく、「言い掛かりだ!ちょっと電車が揺れたから大勢を崩して触ってしまっただけだ!」と、見え透いたしょうもねェ言い訳を繰り返す。


「あれ位の揺れで大の大人の男が身体を支えられないはずがないでしょう、それに倒れかけたならすぐ側の手摺に?まれば良かったはずです。彼女に触れる必要はなかったんじゃないですか?」

「そんなもの、余裕がなかったんだから気づかないだろ!」

「じゃあ百歩譲って、故意ではなく事故で倒れてそこに彼女が居たから触れてしまったとしましょう。でもそれにしては長い間彼女に凭れ掛かっていたんじゃないですか?」

「だからそれは!止まった時にまたバランスを崩したんだ!それにあんな子供にどうこうする趣味はない!」


気色悪く息荒くしてたゴミが、よくもまあそんなことをいけしゃあしゃあと言えたもんだと内心嘲笑う。
確かに名字はルックスもスタイルもしょぼい。でもそんなのにさえ興奮したんだろうがテメェは。なんだか無性にイラついて、思わず舌打ちがでる。しまった、と一瞬思いはしたが結局男はそんなことには気づいてないようだった。

「…そうですか、わかりました。」といえば、男はなんとかやり過ごせたとでも思ったのか、安堵の溜め息をつくと今度は「全く、最近の若者はなんなんだ!」と逆ギレしてきた。
申し訳なさそうに「すみません、僕の思い違いだったかもしれません」と言えば更に気が大きくなったのか「思い違いだったと謝って済むと思ってるのか!そんな甘ったれは俺が根性を叩き直してやる!」とさえ言い出した。

ただの痴漢の分際でなんでそんなことが言えるのか。自分の立場わかってねェんだろうな。そりゃそうかバカなんだから。…それならいっそ、上げまくって奈落の底まで、ぶち落としてやる。


「すいません、本当に失礼な事をしてしまって。なんとお詫びすれば良いものか」

「なら土下座だ!ここで土下座して謝れ!」

「そ、それは流石に…」

「なら今すぐ苦情を言ってやる!どこの学校の生徒だ!学年と名前も教えなさい!」


ああもう、良い加減ウザい。まじで死ねば良いのにこんなヤツ。


「そんな、それだけは!わかりました!土下座やります!やりますから!………なんて、言うわけねェだろ、バァカ。」

「…は?…、」

「…これ、なーんだ?」


自分でも反吐が出そうなくらいの笑顔で目の前の男に見せつけるように取り出したのは、1台のスマホ。
画面には恐らくさっき撮影された名字のスカートの中と思われる映像が映し出されてる。


「は、そっ…!?そ、それ…!」

「…アンタのだろ?上手いモンだな、色気の欠片もねェ貧相なガキのスカートの中が綺麗にバッチリ撮れてる。」

「い、いや、なんだそれは!違う!」

「ふーん?今更隠すことねェんじゃない?良い趣味じゃねェか。…明らかに盗撮だろ、これ。」

「ちが、違うんだ!違う違う違う!!お願いだ、違うんだ!」


真っ青な顔をして否定してるところで、図星をついたも同然。そこに気づかないほど我を無くした時点でコイツの負けだ。


「心配すんなよ。駅員や警察に突き出すなんてことはしねェよ。」

「え…」

「んな面倒事、わざわざやるほど俺も暇じゃないんでね。アンタも振りかかる非難は最小限が良いだろ?」

「な、なら目的はなんだ!金か?!」

「あ?別にシケたサラリーマンの端た金なんか要らねェよ。俺の生活圏内から消えてくれりゃあ充分だ。あー…まぁ、このスマホは貰っとくけど。」

「…あ、」

「さて。もう行っていいぜ。……ではオジサン。良い週末を。せいぜい素人痴漢モンのAVでもみて気分上げて下さいネ。」


コイツと長々話した所でなんも面白くねェし、さっさと消えて欲しくて、そう言ってヒラリと手を振れば、男はすぐに逃げるように改札を飛び出て走り去っていった。

その直後。
俺はというと、手元のスマホを弄りヤツの知り合いのアドレスを適当に選択してあの気色悪いコレクションのデータを数人に送りつける。
そして男のスマホは駅のゴミ箱に投げ捨てた。
恐らく数秒後には知り合いにあの気色悪ィコレクションが届いて、一気にヤツの性癖が知り合いに広がることだろう。

…ただの変態で済めば、御の字だがまあそうはいかねェだろうな。…ザマァみろ。

ちなみに名字の動画データだけはどこにも送信せずに消しておいたが、それはクラスメイトとしてのせめてもの情けであって、他意はない。

アイツのパンツをどこの誰か知らねェヤツらに晒すのが胸糞悪かったなんてことはないし、俺を見てホッとした名字がちょっと可愛かったからつい守りたくなった、とかでもない。

…断じて違う。絶対に。

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