しょーと | ナノ






十四松のヤツさぁ、最近女の子と仲良くなったらしくってしょっちゅうデートしてんの。で、その子結構可愛いくてさぁー。いーよなぁ俺もかわい子ちゃんとデートしてぇ!彼女欲しい!童貞やめ(以下省略)

おそ松がそんなことを叫び、泣きながら人んちの肉じゃがに貪りついつてたのは2週間くらい前。

もともと、あたしがヤツを家に呼んだのは、
御宅のカラ松と十四松が昼夜無視で屋根の上でギター弾きながら歌ってんのクッソうるさいからやめさせてって言うつもりだったんだけど。

我が家とおそ松の自宅….松野家は隣同士。
街中なんで、家と家の間は狭い。正直壁の塗り替えの時とかどうやってやるのか疑問があるくらいに幅がない。そりゃそんだけ近けりゃ、隣が騒がしかったら聞こえてくる。まあ家の中ならまだ良いよ。ちょっとは緩和されてるから。
ただ屋根上星空デュエットはやめてほしいの。すごく響くし。色々と気になるから。

けど結局、あの日あたしはおそ松の弟達が遊んでくれないやらモテたいやらというホンットーに下らないグチを聞かされ、チャーハン作らされ…疲れ果てて貴重な休日を終えてしまったのである。勿論、本来の目的は一切果たせてない。

なんだかんだでカラ松も十四松もおそ松の言うことは聞くしな…とか思ったあたしがバカだった。そもそも六つ子で一番のクズニートはあいつだった。

が、ここ数日は隣のギターも歌も聞こえてこない。流石に寒いのかなと思ったけど、屋根の上にいないわけでもない。カーテンを開けて窓の外を見れば相変わらず十四松はほぼ毎日屋根の上にいるし。ただ先日までとは違い、1人で静かに空を眺めてる。


「十四松。」

「あ。名前ちゃん!!」

「ちょ、声デカイわバカ。今夜だからね、もうちょい声抑えて。」


三角座りでらしくもなく空を眺めてるから心配になって思わず声かけたけど、口開けば言ってることはあんまいつもと大差ない。けど、やっぱりちょっと元気はない。

いつもの十四松といえば、なにがそんなに楽しいんだかわかんないけどいつでも明るくてご機嫌だし間違ってもカラ松みたいに孤独と静寂を愛する()ようなタイプではないし。
正直、あたしからみればほんと今の十四松はなんか十四松じゃないみたいで違和感ありまくりだ。


「ねえ、なんかあったの?」

「ん?」

「いや、えーっとなんかちょっと元気ないのかなって…。ほら、最近歌ってないし。」

「今カラ松兄さん新曲作詞中なの!!えっとね、六つ子に生まれたよ〜唐揚げは愛と平和と少しのスパイスで出来ている〜って曲でね……ぐずっ……」


「…え、は?!どうしたの?!」

「?、?ぅっ…?ぁぁぁぁぁん!!」

「シッ、ちょ、十四松!!ゴメン!!なんかわかんないけどゴメン泣かないで!!!!!どうしたの?!?!」


何が何だかちょっとわかんないし正直ついていけてないけど、やっぱりコイツは何かあったらしい。普段なら怖いし必要もないから絶対やらないんだけど、泣き叫ぶ十四松をほっとくわけにもいかず、松野さんちの屋根に足を伸ばしてどうにか飛び移り、十四松の背中をさすってやる。

だんだん落ち着いてきた十四松は「オレね、」とポツポツと最近仲良くなった例のあの子の話をしてくれた。

話のあと、彼女が何で崖に居て、十四松と出会って、元々は何をしてたのか…とか、気になったことはいっぱいあるけどなんとなく触れちゃだめな気がして、あたしも詳しくは聞かなかった。

ただ、十四松はその子が好きできっとこれからもずっとその子を思い続けるんだろうと思う。それだけはなんとなく、感じた。


「名前ちゃん、ボクあの子に告白しなきゃ良かったのかな…」

「…なんでそうなるの。」

「…。そしたらこんな気持ちにはならないかなって。ボク、変なのかな。」

「告って上手くいかなかったらみんなそうなるよ。…あたしだってそうだし。」

「え、名前ちゃん失恋したの?」

「いやあたしは想いも伝えられてないから失恋以前の問題かな。あのねぇ、気持ちが言えないのってのも辛いよー?ずっと消化不良の感じ。」

「…そうなの?」

「そうだよ。いつまでもハッキリしないもん。それにアンタまた会う約束したんでしょ?ならまだ別に終わってないんじゃないの?」

「…そうかな。」

「そうだって!」

「…あのね、今度の歌ラブソングなんだー。」

「ん?ああさっき言ってた六つ子の新曲ね。え、ちょっと待って。唐揚げがどうとか言ってなかった?」

「カラ松兄さんがね、ボクがいつかあの子に歌ってあげる日が来た時用の歌なんだって。」

「カラ松にしちゃあ気が効いてるね。でもタイトル的には人に向けての曲じゃなくない?」

「…聴く?」

「いや、うん聴きたいけど…」

「じゃあ歌う!まだ全部は知らないからちょっとだけ!!」


……This song is presented to you …my sweet. I fell in love with you at first sight.My heart terribly aches when I think of you.I no longer want anyone but you.If I can see you, ....I' want to catch up with you sometime.I no longer want anyone but you.ーー


正直、十四松が歌い出してビビった。
ガチで作りこまれてる上に英語だった。
しかもラブソングっぽい。
つーか十四松、英語うまいな。どうした発音。あと、唐揚げはどうした。


「……いいじゃん。うん。凄く。」

「…オレ、全然意味わかんないんだけどね。超カッケー?好きになる?」

「なるなる。スッゴイ良い男だよ十四松。」

「………ヘヘッ!!ありが特大さよならホームラン!!!」


…曲のタイトルと歌詞が全然合ってないどころか六つ子も唐揚げもまったく関係ないけど…水を差すのはやめておこう。歌は良いわけだし。

つーか、あたしも人の恋路心配してる場合じゃないし、良い加減にしないとダメだな。
あたしもそのうちちょっと、頑張ってみよっかな。

ちょっとだけいつもの元気を取り戻した十四松を見てると、そう思えた。




どうも、お久しぶりもお久しぶり…ささめです。
以前にお友達からリク頂いた十四松で、いっぽん。アップしときます。


※英文、大幅に加筆修正しました。
一応ご希望があったので和訳載せます。
(だいぶん意訳してる上、正直英文自体が文法的にアウトかもしれません。が、まあ…今回は英文にしろ和訳にしろあんまり深く考えずさらっと流してください)

以下、日本語にしてみると。

愛しい君に、この歌を贈るよ。
一目みたときから僕は恋に落ちた。君を想えば胸が痛むんだ。君以外には何もいらない。もし、また会えたなら…話をしよう。僕には君だけでいいんだ。

…だいたいこんなかんじ。多分。


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