memo simple is the best! ::悪臭(英雄学校/爆轟) ※下あり そりゃあ俺だって子供の頃は、人並みにオールマイトに憧れていたさ。 あの人の救急動画を見ては、誰かがピンチに陥った際、颯爽と駆けつけて助け出すというヒロイック的行為に抱く憧れを強めていった。 けれど、それも小学校までだ。 中高一貫校のヒーロー科に入った俺はどんどんヒロイック的行為にかける羨望を歪めていく。 授業で見る生々しい救急動画の悲鳴に興奮。対ヴィラン時の追い込まれたヴィランに、もしくは深手を負ったヒーローに勃起。 ネットには極度の緊張・興奮状態に陥った際ヒーローでも救助中に勃起するとあったが、どうにもそういう類とは違うという自覚がこの頃から既にあった。 極め付けは、そう。中学3年生時に見た中継である。 今やかの有名な雄英高校のヒーロー科に通っている、爆豪勝己。 カメラに映された、奴がヘドロのヴィランに襲われた際のあの救いを求める表情。 あれで何回オナッたことか。 あれを契機に、俺のヒーロー人生は変わった。 学校帰り、今日も街灯の少ない、荒れた路地裏を闊歩する。 窮地に追い込まれる誰かの救いを求める表情が好き。 助けて、という悲痛な懇願が好き。 俺にすがって、泣いて、喚いて、拾い上げてもらおうと手を伸ばす烏合の衆を見るのは極めて壮観。 けれどそれ以上に好物なったのは、正義を気取ったいけ好かない連中どもがよってたかって叩きにかかるカワイソーな連中。 強い連中からも切られて見捨てられて、あとは世間の慰み者になるだけっつーヤツらを、神様みたいな面して拾い上げるのは大変気持ちがよかった。 いかなる道からもドロップアウトした人間は孤独だ。 そんな誰もが見捨てたボロを拾い上げた方が、普段からあったかーい環境でちやほやされている奴らより拾い主に懐く。尻尾を振ってわんわんわん。 そんなゴミを拾って手慰みにオナホにして使い潰すように遊ぶのはなんといっても気分がよかった。 地道な救援活動とは名ばかり。そんなことを繰り返す内、俺はここらで些か有名なヴィランヒーローになっていた。 ドロップアウトして間もない、下手すりゃ俺より若いのもいる不良たち。 ゴミにたからなけばならないほど落ちぶれたヴィランのおっさんども。 俺が雑魚ヒーローから助けた雑魚ヴィランのにいちゃんs。 ヴィランヒーローに扮した俺を「○さん」(もちろん偽名)と呼んで、彼らは妄信的なまでに慕う。昼間は誰もおらずしんとしているが、夜間のこの路地裏一通りはもはや俺の国といっても過言ではなかった。 鼻歌まじりに往来を楽しんでいると、見慣れない人影が目の端に写り込んだ。 ここの住人じゃない。しかしその影に見覚えはあった。 嘘だろ、なんでお前がここに。 「爆轟…?」 しまった、と思った時にはもう遅い。 「あ?」と酒焼けしたみたいな声が奴の喉奥からこぼれでる。 振り返った彼奴と、視線が交差する。 切り替えろ。 「やっぱりそうだ!雄英高校の爆轟だろ!TV見たよ!すっげえかっこよかった!!俺、一気にあんたのファンになっちまってさ!!なあ、サインくれよ!!」 服んなかに手突っ込んで、紙を探す間抜けのふりをする。 爆轟は予想通り、眉間にしわを寄せて、俺に背を向けた。 切り抜けたと、俺が唇を歪めて弧を描きそうになったその時。 「 テメェ、クセぇな。」 振り返って。先ほどと同じ表情で。それだけ言って。 爆轟は目の前から、しんとした路地裏から去っていった。 「……射精した。」 ヴィランヒーロー名:○ 個性:フェロモン操作。なんらかの形で相手の心の隙に潜り込み、フェロモン<匂い>で相手の精神を支配する。 back ×
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