姉貴と兄貴3
「姉ちゃん、怪我だけはしてくれるなよ?」
「お手柔らかにね、天火」
向き合う二人の間を通り抜ける風
それが合図だった
空丸が気づいた時には既に二人の木刀は重なっており、競り合っていた
「どうだよ姉ちゃん、前に比べて力はだいぶついたと思うぜ」
どんなもんだと云わんばかりの天火の笑みに天華は苦笑する
『そうね、力は申し分ないと思うわ。だけど…』
天華は天火の木刀をそのままなめらかに受け流し背後を取る
不意をつかれながらも持ち前の反射神経を生かした天火はギリギリ天華の攻撃を受け止めた
『それだけじゃ駄目よ、今みたいに受け流されることもあるからね』
「くっ…」
全く隙がない天華の動きと重い一撃に天火は苦戦する
天火の動きは決して悪くない、むしろ良い方だ
剣術、戦略、スピード、反射神経、危機察知能力、いづれにしても群を抜いて良いと云えるほどのものを持っている
なら何故こうも天火が防戦一方なのか…、答えは簡単である
「天華の方が全てにおいてひとまわり上なんだよ、だが力の強さだけで云えば女である天華が不利になる。それでもそれを感じさせないのは何故だかわかるか、空丸?」
「?」
兄ちゃんのほうがちからがあるのに、なんで姉ちゃんのほうがつよいんだ?
まだ幼い空丸には難しいのか、首を傾げながら大湖の言葉の意味を考える
「くくっ、悪い悪い、まだ空丸にはわかんねぇよな?おっ、見ろ空丸!もうそろそろ決着つきそうだぞ」
大湖の目線の先を辿ると
そこには追い詰められている天火の姿があった
「やっべ、もしかして俺今ちょーピンチ?」
『そうかもね、でも天火は此処からが本領発揮でしょ?』
追い詰められた人ほど隠れている潜在能力を発揮しやすい、そしてそれは天火に当てはまるものだった
「なぁ姉ちゃん、お互い次で決着つけようぜ?んでもって飯食おう!」
俺腹減って死にそうだわ一一と云いながら構える天火に天華も笑いながら木刀を構えた
初めと同じく向かい合う二人の間を通り抜ける風
動き出したのはほぼ同時だった
『!?』
天火は最初と同じく真正面から向かって来た
天華もそのまま真正面から向かうが急に天火の姿が視界から消えたのだ
「同じ手にはひっかからねぇ、学ばせてもらったからな!」
天火は懐に入ろうと速度を保ったまま素早く状態を屈めていた
そのせいで天華は天火が突然目の前から消えたと錯覚していたのだ
「もらったぁ!」
天火はスピードを殺すことなくそのまま木刀を天華に振るう
「ねっ、ねぇーちゃん!」
危ないと空丸は云おうとしたのだろう
しかしそれは隣に居る大湖と小雪によってとめられた
「大丈夫だ、見てろ」
「あなたのお姉ちゃんの凄さをね」
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