06
 了とは別のクラスで生活しているバクラには悩みの種がある。今年になってこちらのクラスに遥々エジプトから転校してきた双子のことだ。二人は外見はよく似ているのだが、中身は全く異なっていた。いや、外見も瞳や身長や髪色を除けば他全部違っている。兄であるナムは人懐っこそうな優男のイメージを持てるが弟のマリクは顔から髪型から何まで厳つい感じだ。自分と了も例外ではないが双子でここまで似ていないのには驚く。それにこの二人の仲は良好という訳ではなさそうで、すぐ険悪なムードに陥ってしまう。特にナムの毛嫌いさは異常で、狂気を感じてしまうほどに酷い。
 弟の方とはよくつるんでいたりするのだが兄の方には何故か居心地悪さを覚え、極力此方からは絡まないようにしていたりした。そうしていても勝手に声が掛かってくるわけだから話さないなんてことはない。

「それでさーあいつったらね」
「……お前」
「なに?」
「いや…愚痴はよく聞くが、お前がマリクのことを名前で呼んでるの聞いたことないなと思って」

なんとなく引っ掛かっていた疑問を何気なくぶつけてみるとみるみるうちにナムの表情が苦々しいものに変わっていく。聞いてはいけないことだったと察するまでそう時間はかからなかった。俯いていた顔をぱっと上げ、重い空気を弾くように明るい笑顔でそうだっけ、と誤魔化す姿が痛々しく心に残る。こういうのが苦手でどう会話を続ければいいのか検討もつかず口ごもってしまう。そしてこの気まずかった空気を壊したのはまたナムからだった。

「思い出したんだけど、先週辺りに姉さんが新しい古代エジプトの本を入手してたんだ。了がそういう類いの物が好きって言っていただろう?ボクが読み終わったら貸してあげるって伝えておいてよ」
「あ、ああ…。わかった」
「うん、ありがとう。祖国に興味を持って貰えるなんて嬉しいな」

まるであの会話自体がなかったかのように振る舞われバクラは複雑な思いを抱えたがナムの目が此方に何も突っ込むなと言っている。家庭の事情に土足でずかずか入られるのが嫌だという気持ちは分からないでもないため口を挟むのは止めにしたのだが、どこかではまだ気にしている自分がいた。

「了の後はバクラにも貸してあげるね」

机に肘をついてにこにこしているこいつと深く関わると厄介なことになり兼ねない。そんな未来を予知したような気分になって、天井を仰いでから深く項垂れた。

 

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