05
 膝の上に座っている一番下の弟が船を漕ぎだしたのを確認して盗は腹を優しく叩いてやった。

「眠いか?」

返事はされなかったとしても一目でそれは判る。目を擦り、消え入りそうな唸り声を出した子盗の体を担ぎ上げて盗は寝室へと向かう。蒲団は几帳面な性格を記して律儀に皺を伸ばして畳んであった。手を使えない代わりに足で乱雑に広げそこに子盗を落とす。ぽふ、と柔らかい布に置かれシーツに身を任せると瞼が一気に重くなり開かなくなったらしい。手探りで盗を探しだした。

「にいちゃー…」
「おう、兄ちゃんならここに居るぜ」

頭を柔らかに撫でられるとへにゃりと頬を緩ませる。それから聞こえる規則正しい寝息は安眠を示していた。



 盗も二人では狭苦しい蒲団に並んで横になり逞しい腕を枕代わりにした。愛くるしく眠る弟の頬を撫で上げる。

「兄ちゃんはずっと一緒だ」

 それは祈りにも似た言葉を投げ掛け、掌に簡単に収まってしまう幼い拳を握って微笑んだ。おやすみという意味と約束をかけたキスを額に落として。

 

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