03
 がらりと開いた扉の先には獏良が居た。いつものメンバーでおはようと挨拶をして迎えようとしたのだが、一同は獏良のとある一点を凝視し固まってしまう。最初に気を戻したのは遊戯であり、首をぶんぶんと揺らすとあんぐりと大口を開けて声を張り上げた。

「その隈どうしたの!?」

獏良はその問いに苦笑を溢し、腕を後頭部へと回した。上下にかき出せば広がっていた髪がより四方八方に動く。

「金土日と連徹しちゃって…」
「どうしてまた…」

せっかくの美少年が台無しになるほど濃い黒隈は細い身を更に痩けさせる演出をしている。台無しといってもそれでも綺麗な顔立ちはそのままで瞳の優しさは失っていなかった。けれどファンクラブの子達が見たら騒然とするのは目に見えていた。

「新しいゲームを兄さんが買ってきてくれてそれで夢中になってたら、ついね」
「獏良君が言ってる新作のやつってもしかして育成ゲームの?」
「そうだけどまさか遊戯君も持ってるの!?さすがゲーム屋さん!」
「あれ楽しいよねー」

なんだか論点がズレて女子高生のトークのようにきゃっきゃっと勝手に盛り上がり始めた二人は次々に話を展開させていく。一部始終見ていた城乃内は詰まらなそうに唇を尖らせる。ゲームなんてゲーセンの格闘ゲームやM&Wみたいなものしかしたことがなく、ソフトを使う携帯ゲームなんて一切持っていなかった。持っていても父親がストレス解消に破壊してしまうせいで城乃内にとってそれはとても羨ましいものであったのだ。
 この話は置いといて、とにかくだ。遊戯の肩に肘を置きびしりと指を指す。

「倒れちまったら大変だし、お前のあの見た目がおっかねー兄貴だってそんな風にゲームしてほしくないだろ。兄弟多いんだし何か言われなかったか?」
「どうだろう…?僕って本気で集中しちゃうと他が見えなくなるタイプだから、声かけられてたとしても気づけてないかも」
「ええっ!?それならご飯とかどうしてたの!?」
「記憶にないなぁ」

生命に関わることをまるで世間話のようにあっけらかんと答える獏良に頬が引き吊る。金曜はまだ学校で昼食を採っていたとはいえ、その日の夕飯からは何も食べていない可能性が高い。背筋が凍る思いがした。ゲームが大好きな遊戯でさえやるのは程々にしようと改めて考えさせられるぐらいなのだから、城乃内は先程の羨ましいと思ったことを取り消し今しがた手に入れた知識を入れる。
ゲームなんてロクでもねえもん、絶対買わない。
獏良は一般人にトラウマに近い想いを植え付けながら平然と席へ鞄を置きにいってしまった。

 

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