起爆札製作より断然楽しい。もともと料理は苦手より得意の分類だった。上には上がいるように忍のわたしと生粋の料理人を比べたら劣るけれども、忍内ならば得意ですと言ってもいいんじゃないだろうか。

「料理って薬の調合と同じですから」
「ナマエ、薬剤調合ができるのか?」
「そんな後付け設定ありませんって。薬の調合と同じように手順と分量間違えなければ出来るってことです」
「それにしては繊細な味付けだな」
「料理には性格がでますからね!わたしは乙女で繊細な心の持ち主ってことです!」
「嘘言うな。細かな作業と記述された教本通りにしか行動できぬだけだろ。偉大なのは料理本よ、図に乗るな」

 扉間さんの言う通り。優秀な忍は任務を効率的に遂行するため時折作戦を変えたりする柔軟な発想を持っている。わたしはそんなことせず普通に言われた通り記述されている通りやる。この料理本が、丁寧に灰汁を取れ、食材は味が染みるようにこの切り方を、などと事細かに書かれているからそうしたまでのこと。経験値のある人にこの本があれば無敵だっただけなのだ。味わかんないし。
 買ってきた料理本のチョイスを褒める扉間さんを脳内補正でツンデレ美少女に変換させる。どんなに罵倒されても我々の業界ではご褒美なんでね!なのに扉間さんは普通に完食して「美味かったぞ」と感想を残して再び仕事に戻るもんだから調子が狂う。褒められると嬉しい単純思考なわたしは次回も頑張ろうと皿洗いに精を出した。家事は料理だけじゃない。それが終るとお風呂の支度と掃除をして、なんだかな。

「まるで家政婦みたい……複雑な気分です」
「嫌か?」
「嫌というより、結婚したら後悔する生活を具現化させたような扱いに複雑な気分なんです」
「滞った仕事が終われば新しい起爆札の製作をやってもらう。気分も晴れることだろう」
「あー家事って楽しいなあ!扉間さんのお嫁に立候補したい、ぐらい、がはっ」
「……無理に嘘をつくな。穢土転生体なのに吐血しておるぞ」
「札内職は勘弁……」
「新しい札は起爆と口寄せを一枚に五つ仕込ませ一点集中攻撃を再現させる予定だ。手間もかかるが……前と違い時間にゆとりもある。安心しろ」

 実はこれ血じゃなくて赤辛子なんです。扉間さんは鉄の臭いのしない香辛料に気づきながらもつっこみを入れてくれた。意外とノリのよいお方だ。

 交渉の結果、暫くは家事を中心に任されることとなった。滞った仕事が終われば、扉間さんは本格的に火影殿の補佐役に回る。わたしは家事をしながら空いた時間に札を作ったり遊んでいいらしい。わたしが部下として使えなさすぎるため、扉間さんの手が空いたら術の指導もしてくれるとか。なんと昇格したことか。

「じゃあ!瞬間移動の術も教えてくれるんですか!」
「手が空いたらな。……ナマエも飛雷神が使えるようになれば色々と融通が効く。素質は悪くないのだから無理矢理にでも仕込ませる」
「言い方キツイですよ扉間さん。でもやっと部下らしい扱いに感激です!」
「フッ……単純な奴だ。先に言っておくがワシの修行は厳しいぞ」

 その言葉がやっとわかるのはスパルタ教師扉間さんを体験した、一ヶ月先のことであった。


昇格ボーナス

 

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