「きゃあああ!子供がいっぱい!」
「ナマエ、落ち着け」
「これが落ち着いていられますか。わたしの里は忍育成機関はまだ計画段階で完成してないんです」
「完成しておらんのは木の葉も同じだ。教員や訓練所も足らず、まだ結果が見えとらんからな。卒業後は小隊や班を組ませるがそれもまだ大体の案しか」
「嫌味ですかこの先進国め!」

 いちいち理想が高い木の葉のシステムに敗北と少しの苛立ちを感じて扉間さんにあたったら当然のごとくスルーされた。それどころかガキかと罵倒される。過ごし易い土地柄にここまで進んでいる忍里、嫉妬の炎がめらめらですよ。まったく羨ましい!

「あまり長居はせんからな」
「えーそんな折角午前中に頑張って仕事終らせたのに。ものすごい速さの書類処理でしたよ、さすが扉間さん!有能、有能!」
「兄者が珍しくやる気を出しただけだ。おだてても夕方には用事があるからな」
「扉間さんのけち……何でもないです、はい何も言っておりません」

 けちな扉間さんは忙しいお方だ。そのため滅多に術の稽古を見てもらえないけれど、稽古というより拷問レベルの厳しさだったので永遠に忙しくていいのよ!と願いながら家事や扉間さんの研究を手伝っていた。向上心も中途半端なわたしはそんな日常でよかったけれど、扉間さんが「アカデミーの様子を観てくる」とか言ったら着いていきたくなるのが心情。駄々っ子作戦に見事引っ掛かった…引っ掛かってくれた扉間さんに着いてきたのだ。
 駄々っ子作戦実行中のあの扉間さんの冷めた視線は忘れられない。氷遁のように冷たくも売れ残り処分品を見るような無機質さと石畳の隙間から健気に生える草花を見る生暖かいあの視線。結構なダメージを食らいましたが修行を頑張る木の葉の子供たちを観て癒されよう。

 アカデミーはちょうど座学の授業中のようで、教員の案内を受けながら教室の後方から見学をする。気配も音も消して入室すると板書前の教師は扉間さんにぎょっとした後、恭しく礼をした。それにつられて何名か生徒も振り返る。黒板に書かれていることや説明している教師の内容から、本日の授業はどうやら忍の五大性質について教えているようだ。
 しっかしまぁ、いつの時代にも天才はいるもので「オレはもう火遁できるし!」とどや顔で自慢する生徒。うちはの家紋を背負った子も自分もできると主張している。

「子供って無邪気でいいなあ。あの子とか将来大物になりそうですね」
「あの猿飛佐助の息子だからな」
「猿飛……どこかで聞き覚えのある名前です」
「ナマエがそう覚えているぐらい優秀な忍だ。授業中の私語はともかく直ぐにでもナマエを追い越し、いずれ里にとって大きな戦力となるだろう」
「なるほど、その台詞一つで相当わたしが貶されている気がしました」
「実際貶している」

 あ、できれば言ってほしくなかったですねその一言。うちはマダラの存在でさえ知らなかったわたしに常識を求める方が悪い。最近まで火影のフルネームですら危うかったんですよ。
 校舎を一通り観て、また教員と話し合う扉間さん。どうやらもう仕事場に戻るらしい。扉間さんほどのお方がいらっしゃると授業はやりにくいだろう、そう思って長居をしないところはさすがというべきか。真面目過ぎてなんだかなあ。いっそのこと子供に混ざって一緒に授業受けるぐらいの気分でいればよいのに、視察で終わるだなんて。

「本当にただの参観って感じですね。わたしはてっきり授業受けるつもりで筆記用具とノート持ってきたのに……はぁ」
「一回り幼い子供に紛れて授業受けるつもりだったのか」
「駄目ですか?」
「普通に考えて……いや、頭は適齢か。別に幼い子供と授業を受けても問題ないな。どうだナマエ、ワシが話を通してやろうか?」

「遠慮します!ものすごく馬鹿にされた気分です」

 確かに扉間さんからみればわたしなんてしょうもない忍ですけれど。これでも扉間さんと同じく子供時代に戦ばかりの世を生き抜いた忍なんですよ。千手一族とは請け負った戦の規模も敵の強さも違いますが。さすがに安全な場所で教科書や修行で鍛え演習が戦の人たちと比べるのは失礼すぎやしませんか。

 イラッときたので今夜は風呂の温度をアッツアツにしておいたら、扉間さんは水遁使って適温にしたらしい。いつかぎゃふんと言わせたい。そう誓った瞬間に言い負かされる日々。


視察と学習

 

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