■ 心臓は静かに軋んだ

 あぁ神様、私はどうしてこんな目に遭っているのでしょうか。



 目の前には彼の大剣豪たる“鷹の目”のミホーク。
 の、男臭いセクシーな顔と、うっすら汗を纏った裸身。ギシギシと軋む安普請のベッドのスプリングと跳ね乱れた呼吸音。肌越しに肉のぶつかる音が生々しく響いている。

「あっ、あ、あ、…は、っひぁ、!」

 リズミカルに体を揺らされる度、口からは喘ぎばかりが零れ落ちていく。
 抱かれている、と言えばまだしも聞こえはいいが、これはそういうものではない。完全な無理矢理で、つまりはレイプだ。
 私は彼の愛人でもなければそこらの娼婦でもなく、ただのメイドである。マリージョアで開かれる会議に召集された七武海を留め置く為の屋敷の、その一つの部屋の付属品のようなものだった。彼らが逗留する間、不便がないようにと専用の使用人が雇われているのだ。
 召集されても半分も集まらない七武海だが、誰かしらが現れればトラブルが起きないなんてことはない。これも多分その“些細な”トラブルのほんの一つに過ぎないのだろう。いや、もしかしたらトラブルでさえないのかもしれない。メイドたちの間では、彼らの慰みものになるのも仕事のうちなのだという真しやかな噂がよく囁かれていた。

「ふ…っ、う……ぁ、あぁ…っ」

 無理矢理だった割、突かれ揺さぶられる毎に私は彼を受け入れ始めてしまっている。そういう自覚はあるけれど、でもだからといって許容出来る訳でもない。
 見上げた輪郭はシャープで、物静かなようで雄々しいとすら感じられる風貌は嫌いではない。寧ろ十分過ぎるくらいに好みの範疇だ。隙なく鍛えられた筋肉質な体は遠目から見ていても惚れ惚れするくらいだった。
 早朝に目覚める彼の御用聞きにきたら寝乱れたベッドに引き摺り込まれた、なんてことが起きなければ、私は今後も少しばかり憧れるような目で遠くからその姿を眺められたのかもしれない。
 強く腰を突き上げられ、胎の奥を執拗に刺激される。普段より浅いところに降りてきてしまっている子宮口をそんな風に捏ね回されるのは慣れなくて、世間一般的な男性のものよりも質量のある彼の性器を恨めしく思った。
 だってそんなにされたら、私は本当に喘ぐ以外の行為を剥ぎ取られてしまう。
 深いところで感じるのはどこか怖い。自分が自分でなくなるような感覚がするからなのかもしれない。だから私は浅い方が好きで、そもそも普段はそんなに奥では快楽を得ない。
 だけど今日このときばかりは、勝手が違うようだった。

「あ、ひ、っ、やぁッ…中で、」

 出したらダメ。
 ダメ……なの、に。
 熱が体の深くで弾けた。だらしなく口を開いた子宮に向かって、たっぷりと精液を注ぎ込まれてしまう。濃厚な種付けにくらりと意識が霞むようだった。

「あっ…ぁ、あぁ…」

 呆けたように開きっぱなしの口からは快楽に染め上げられたか細い声しか出ない。そんなつもりはなかったのに、無理矢理だった筈なのに、どうして私はこんなにも。
 生理的な反応で零れた涙でぼやけた目で、私は彼を見上げた。
 私は酸欠になりそうなくらいに呼吸が苦しいのに、彼ときたら涼しいものだ。だけど微かに私で感じていた気配は残っていて、それに何だか、心を揺さぶられた。
 こういうのを何と言ったらいいのだろう。上手い言葉が、見つからない。
 そのことを悔しく思いながら、私は体力の限界を感じてゆっくりと目を伏せた。







ミポたんは意外と至るところに現地妻がいそうな

14.9.20


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