■ 甘い目眩まし
「わーにちゃん」
「幾らお仕事が忙しいからって一ヶ月も恋人ほっとくって酷くない?」
「しかも何の連絡もなしに!」
「全然気にしてない振りしながら私だって一応悩んだりとかするんだから」
「………悪かった」
「何でクロコダイルが答えるのよ、私はバナナワニちゃんとお話ししてるのっ」
「…※※※」
「煩いうるさーい! クロコダイルとは国交断絶中なんだから話し掛けないでよね」
「………」
「………」
「……※※※、そう拗ねるな」
「拗ねてないもん」
「※※※、」
「別に私は恋人が美人な秘書と一ヶ月どっかに行ってたくらいじゃ拗ねないし嫉妬しないし怒らないもん」
はぁ、と深い溜め息。ぎしりとソファの固いバネが軋む音。
「下準備に思いの外時間が掛かったんだ、お前を連れていくのに不安要素があっちゃ困る」
「…え?」
「※※※、お前もアラバスタに来い」
まるで決定事項みたいに言い放って、既に歩み寄りきっていたクロコダイルは床にぺたりと座る私の上に屈み込んだ。触れた唇が想像以上に熱くて、私の思考はふわりととろかされて流れ落ちてしまった。
存外このあと利用されて殺される感じかもしれない
14.8.9
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