■ 児戯
※鰐娘(エンパイアローズ)設定
はっ、と熱い息が口から漏れた。
俺は武器庫の片隅に置かれていた大きな木箱に腰掛けて、あろうことか自身を慰めていた。時間は深夜。場所は軍艦の上、大規模な海賊討伐の仕事の帰路である。
該当の島の位置的に本部に戻るまでには時間が掛かり、仕事中とあって討伐が終わるまでは処理をするような気持ち的な余裕がなかった。それが激しい戦闘で昂ぶってしまった、という訳だ。
両隣の部屋に同僚がいる中でどうこうするのは何となく気が引けて、歩哨の目を避けつつ武器庫に足を向けたのは十数分程前だった。あくまで事務的に処理してしまおうと思っていたものの、どうにも体の方はそれでは治まりがつかないらしい。面倒なことだ、と頭の片隅で思いながら無心に手を動かす。
──と、俄かに足音が耳に届いた。おいおい、と思った時には既に、武器庫の扉は軋みを上げつつ開かれてた。
こつりと靴底が床を叩く音がする。それはゆっくりとした足取りで、だが確実にこちらへと近付いてきているようだった。下手に動くことも出来ず固まっていると、棚の向こうに人影。そして、その蔭からごく何気ない様子で※※※が現れた。
「……あら、ごめんなさい。お邪魔しちゃったわね」
そんな台詞を白々しく吐いた※※※は俺の同僚の一人だ。年下だが階級はたったの一つ違いで、青雉が拾ってきた部下ということでそれなりに注目されている存在だった。相応の実力もあり、近しい海兵には一目置かれている。
いつもはきっちりとしたパンツスーツに身を包んでいるのだが、夜とあって※※※が纏っているのは薄手の夜着だ。ネグリジェと言うのだろうか、布地が細身の体の足元近くまでを覆っている。
※※※は俺の様子を見留めるとすぐに踵を返したが、ややあって肩越しに視線を投げてきた。金の目が薄暗闇に怪しげな色を見せる。
「それとも──手伝ってあげましょうか」
「……、は?」
理解が及ばず俺が間抜けな声を上げた時には既に、※※※は距離を詰めきっていた。膝が折られ、俺の手を退けながら女の指がぺニスを撫でた。
「っ、おい…!」
床に完全に座り込んで、※※※は何の躊躇いもなくぺニスを口に含む。口内の温度に思わず腰が跳ね、それをくすりと笑われた。
蠢く舌が先走りを塗り広げるようにしながら口淫を施してくる。それが齎す快楽に、俺は口を離させようとしていた手を虚空に彷徨わせてしまう。いけない、とは思うのだが、脳が痺れたように思考停滞してしまっている。
暫く好き勝手に俺を弄んでいた※※※が、ふと顔を上げた。視線が搗ち合うとにんまりと唇が弧を描く。それはどこか悪魔的な色香を内包した笑顔だった。
ぺニスから口が離され、ほっとしたのも束の間。※※※の体からネグリジェがはらりと脱ぎ落とされ、俺は目を剥いた。
※※※はネグリジェの下に下着の類を何も身に着けていなかったのだ。晒された一糸纏わぬ裸体は不健康な白さで、服を着ていてもよく分かるスタイルの良さが更に際立つようだった。思わずごくりと喉が鳴る。
こいつを普段から女として意識したことはない。性別の違いなんて大した問題ではなく、他の同僚たちと同じようにしか捉えていなかった。だがこうして見ると匂い立つ色は明らかに女の──敢えて悪い言い方をすればメスの──それだ。
※※※は俺を真っ直ぐに見据え、唾液に塗れた舌でゆっくりと薄い唇の上を辿った。その仕種は如何にも官能的で、同時に捕食者の様子すらも含み込んでいる。
「スモーカー君、」
どこか陶酔したように俺の名前を口にしながら、※※※が膝の上に乗り上げてくる。
そうして俺の体を背後の壁に押し付けるようにして深く唇が重ねられた。濃厚に舌を絡めながら、また手がペニスへと伸びてくる。
それが導かれる先は、一種予定調和的だ。だが俺はどうにかしてそれをすんでのところで押し止どめることに成功した。※※※の柳眉が微かに顰められる。
「…私みたいな女とスるのは嫌?」
唇を少しだけ離した、殆ど触れ合っているような身近な距離で囁くようにそんな言葉が紡がれる。
その間もペニスの先端は熱い潤みの間を行き来していて、正直なところ溜まりに溜まっている性感を煽られることこの上なかった。しかし俺は平静を保っている振りをして、いつもと変わらないようにと努めて声を吐き出した。
「そういうんじゃあな──っ、おい待て…ッ!」
「…ぁっ、あ、は……ん、っ…はぁ…」
全てを言い切る前に、※※※は勝手にもずるずると腰を落としてきてしまった。待ち侘びていたものが漸く与えられたとでも言わんばかりの蕩けた視線に、ぞわりと腰の裏を快楽の舌先が舐めた。
亀頭を全て飲み込まれてしまえば、後はもう慣性の法則に従うように中へと含み込まれていく。
※※※は俺の体にしな垂れかかるようにして暫く感覚に慣れようとするように動かないでいた。それが徐に肩に手を回してきたかと思うと、緩やかに律動が開始される。
「、お前…青雉とデキてんじゃないのか」
「ふぁ…? ん、ふふ…あれスモーカー君だったの? 別にそんな関係じゃ、ぁ…っ」
「ハッ…悪い女だ」
「私だって人肌恋しくなること、くら、…っ! あッ、ふ、ぁ…あ…!」
喋るのを遮るようにして腰を奥までグラインドさせたのに反応して、※※※がびくんと仰け反った。
その口振りと先程からの態度で余程慣れているものかと思ったが、予想に反して胎内は狭量だった。ともすれば処女じみたキツさと※※※の悩ましい表情がどうにも一致せず、その違和感の正体を暴いてみたくなる。
俺は自分の上に乗ったすんなりとした腰を乱暴に掴むと、蠢く粘膜を割り裂くようにしてぺニスを突き入れた。ぞくぞくと背を震わせて※※※が苦しげな嬌声を漏らす。いつもきちりと後ろに流されている長い前髪が今は額に落ちかかっていて、その隙間から覗いた瞳が涙で濡れ光っているのが見えた。ぞわ、と悪寒にも似た衝動が項を掠める。
それは凶暴な欲求だった。こんな風に気持ちを掻き乱されたのは初めてかもしれない。
「や…スモーカ、く…はげし、ひァっ、ぁ、あぁ…っ!」
「お前が自分から乗ってきたんだ、最後まで付き合え」
腰を浮かせて体を離そうとするのを押さえ込み、寧ろもっと奥を攻め立てるように突き上げる。強く掴んだ※※※の腰には下手をすれば指の痕くらい残ってしまうかもしれない。だが俺にはそんなことに気を回せる余裕は残っていなかった。
「あっ、も、とゆっく、り…っ、」
「…悪ィが無理だ」
素気なく言い放ち、いじましく絡み付いてくる粘膜にぺニスを擦り付ける。※※※は俺を責めるような視線を一瞬だけ見せ、それからふいと目を伏せた。せめてもの意趣返しのつもりか、後頭部に伸びてきた指がくしゃりと髪を掻き乱す。
薄く開かれた唇が間近で喘ぐ。艶の乗った声はいつもの※※※のそれとは思えない色を宿している。それを耳にしながら俺は律動を早めた。
◆ ◇ ◆
「お早う、スモーカー君」
「あぁ…確かに今日は早ェな」
「いつもだって寝坊はしてないわよ」
「そりゃ最低限ラインだろ」
「お二人さん朝から仲良しだねぇ…」
「、青雉」
「…大将がこの時間に起きていらっしゃるなんて今日は海が荒れますわね」
「あららら、俺そういう扱いなの?」
「あー…」
「まぁ概ね」
「うっ…※※※ちゃんが酷いオジさん泣きそう…」
「ふふ、慰めては差し上げませんよ」
そう言いながら俺にちらりと視線を投げて寄越した※※※の口元は、淡く妖しげに笑んでいた。
無性にヤりたくなる時ってあるよねっていう話(だった気がする)
14.3.28
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