■夏の夕方

夕暮れ時。

まだ誰も帰宅していない俺の家に着いて、自分の部屋に入るなり、夏也と俺は、どちらがどちらともなく唇を重ねた。

ー早く抱き合って、交わりたい…

衝動のままに、身体が動いていた。

夏也の大きくてゴツゴツした手が、不器用そうに着ていた白いシャツを裾から捲り上げて、その下に隠されていた乳首に触れた。俺の身体は、無意識にピクンと反応する。

「…っん」

堪えきれずに声をあげた。

一気に部屋中が、淫猥な空間に染まる。
俺は場の雰囲気に飲まれない様に、まるで対抗するかの様に、夏也のシャツを捲りあげた。

晒された大胸筋は、水泳部のトレーニングの成果か程よく鍛えられなだらかに盛り上がっていて、先端にある乳輪は日焼けして薄黒く光り、俺はゴクリと唾を呑み込んだ。

いつも部活で裸なんて見慣れているはずなのに。
こうやって薄暗がりの部屋で見る、夏也の引き締まった肉体が、美しく、そしてエロいと思わずにいられない…。

夏也の胸にそっと手を触れると、肌は汗ばんでしっとりと指先に吸い付くようだった

夏也の乳輪を親指と人差し指で摘む様にして指先をグニグニ動かすと、あっという間に先端が膨らんでぷつっと立ち上がった。

「夏也、ここ立ってる…」

そう言って、俺は夏也の胸に唇を近づけ、そのまま乳首を口に含んだ。
ちょっとしょっぱい汗の味がして、たぶん…俺はものすごく興奮していた。
舌先に力を込めて尖らせ、乳首の先端をグリグリ刺激すると、夏也が声を漏らした。

「…っん 尚…っ」

湿った吐息を含んだ、少しくぐもった声で切なげに俺の名前を呼ぶ。
夏也が浅く息をしながら身体を捩ると、夏也の下半身の硬くなった中心部分が、俺の腰にあたった。

「夏也って乳首弱いよね…。ここ気持ちいいの?」

「…あ…当たり前だろ…っ!
尚にこんなことされたら…俺…っ んぁ…っ!」

俺はもう一度乳首吸い付いて、夏也を刺激した。さっきよりも強く吸い付いたり舌先で先端の粒を転がしたりしながら、夏也の顔をチラッと見上げた。

夏也は頬を赤らめ、瞳をギュッと閉じて、それとは相反する様に口は緩く開き気味になって、俺からの刺激に応じる様に、時折はぁはぁと熱っぽい息を吐き出していた。

ー夏也 かわいい…ー

余裕のない夏也。
俺だけが知っている夏也の姿。
こんな風に夏也を眺めて、俺はドロドロとした征服欲を満たしていく。
夏也の快楽に歪んだ顔を暫く眺めていると、夏也が視線に気づいたのか、俺の方を薄目で見て言った。

「くっそ…尚、随分 余裕だな…」

そう言いながら夏也は腕を伸ばし、俺の目元を撫で、それから鬱陶しく顔の前に流れてきていたサイドの髪を耳にかけた。

「尚の顔…エロい…よく見せて」

「ばっ…か…っ!」

日常生活で聞くことは無い夏也の熱っぽい声と、絡みつく様な視線が降り注ぐ。俺は急に身体がカッと熱くなった。

「尚、顔赤いぞ…。もしかして照れてる?」

夏也はそう言いながら、俺の腰に添えてあった両手をすっと胸の方へと滑らせて、左右の乳輪をギュッと強く摘んだ。

「っ…ぁ…っ」

夏也の指先から受ける直接的な刺激。
ジンと痺れる様な甘い痛みを湧き出させて、それは今の俺の身体の中心を疼かせるのに充分すぎる刺激だった。

ーなんだこれ… 頭が…熱い…

夏也のペースに飲まれるのが急に怖くなって、俺は一旦夏也から身体を突き離そうとした。
けれど、夏也は俺の腰をぐっと掴んだまま離さず、さっきよりも下半身を密着させてきた。

「尚…わかる…?俺の…もうこんな…」

欲情した雄の表情を浮かべた夏也が、自分のアソコを俺のズボンにグイグイと押し付けてきて、俺のアソコを擦った。

「…って…尚も勃ってる…」

俺の状況に気付いた夏也が、何処となく嬉しそうに言った。
予想以上に自分の身体が敏感に反応している事に、自分自身が一番驚いていた。
身体の中心が熱くて、自分だけではどうしようもない得体の知れない疼きが湧き出していく。

ーやぶ蛇だ…

次から次へと湧き上がる性欲…
自分自身を慰める時とは明らかに違う。
酔ったみたいに、俺は何も言葉が浮かばす、唇を噛むことしかできない。

そんな俺をじっと見つめたまま、夏也はカチャカチャと自分のベルトを緩め、ズボンをずらした。
ズボンの下に仕舞われていたボクサーパンツ越しに、夏也のアソコがくっきりと形に出ていて、俺は焦りを感じた。

「尚も…脱いで」

「…う…ん…」

上ずった声で返事をしたものの、俺は妙に冷静な夏也の言動に戸惑いを隠せず、ベルトに手をかけて、そのまま固まってしまった。

「尚…どうしたんだよ? …脱げよ」

…夏也が怪訝そうに言う。
自分でもわからない…。
なんでこんな身体が言うことを聞かないのか。
別に初めてなわけでもないのに。

「ごめ…ん…。 今日の俺…なんかやっぱ変で…
うまく身体が動かない…」

俺の言葉に、夏也が驚いた顔をする。
それから嬉しそうにふふっと顔を緩めた。

「なんか不器用な尚って新鮮だよな…
んー… じゃぁ…腰上げて?」

俺は言われるがままに、夏也に手伝われながらおずおずと腰を浮かした。
夏也は俺のベルトを素早く緩めると、躊躇なくズボンとパンツの両方をいっぺんにまとめて、膝あたりまでズルッと脱がした。

「あ…っ!」

すっかり煮え滾って窮屈そうだったアソコが解放され、部屋の空気に晒される。
高々と天を仰ぎ見るアレは、先端から先走りが漏れ出て薄っすら光っていた。
夏也は俺のアレを握ると、感触を確かめる様にその手をゆっくりと上下に動かした。

「尚、すげぇヌルヌルしてる…」

敏感になっている所に突然強い刺激を受けて、俺は左右に身を捩った。

「ぅあ…っ」

「尚のここ、すげぇ…硬い…し…
すげぇ…ビクビクしてる…」

夏也が興奮した様に言う。
自分でもどうしてこんなに過敏に反応してしまうのかわからなくて、ただ事実を突きつけられただけなのに…恥ずかしくてたまらなかった。

「尚、早く俺と…したかった?」

「もぅ…っ!夏也、言うなバカ…っ!!!」

羞恥心で死にそうなのを、必死で誤魔化したくて、俺は夏也の胸を拳でドンドン叩いた。
夏也はその手を受け止めると、ギュっと握り返して言った。

「俺は尚と…早くしたいけど」

「…っ!!!」

ドクん と心臓が強く早く鼓動した。

ー…なんで…なんで…っ
なんでこんな時だけお前は素直なんだよ…ー

いつもは不器用なくせに、こんな時だけ真っ直ぐに気持ちを伝える夏也。
俺には到底マネできない。

「…もぅ…夏也のバカ…っ

これ以上…好きに…させるな…っ」

最後の方は、まるで一人言でも呟く様に小さく小さく言った。

「え?何? 尚なんて言っ…ん…」

夏也の言葉を遮る様に、俺は夏也の唇を唇で覆った。

唇を深く重ね、待ちきれずに舌を差し入れた。俺の舌に応じる様に、夏也が舌を絡ませてきて、お互い口内を掻き混ぜた。

ねっとりと柔らかく湿った粘膜の熱を感じたくて、貪る様に求めた。

厚みのある柔らかい夏也の舌が、力強く口内を求めてきて侵していく。
二人分の唾液が混ざりあって口から溢れ出て、ピチャピチャと甘美な水音をたてていた。

「夏也…」

俺は我慢できずに夏也の右手を取って、自分のアソコに押し付けた。

夏也は何も言わずに、俺のソコを握ると、再びゆっくり手を動かし始めた。

「あ…っ あ…っん」

指先が敏感な部分を擦る度、強い快楽が押し寄せる。息が熱くなって、自分でも驚くほど、甘い声が漏れてしまう…。

「…っ あ…っ はぁ…ぅ ん…っ」

夏也の手が、俺を徐々に追い詰めていく。

「夏也…っ 気持ち…いい…っ んっ」

ぐちゅぐちゅといやらしい音が、部屋中に響いて、自分の喘ぎ声と重なって聴覚を刺激する。
気持ち良くて、頭がおかしくなっていく。

「尚…かわいい…好き…尚…」

夏也が耳元で甘く囁く。
胸がきゅっとなって痛い。

「な…なつ…やぁ…
も…っ いき…そ」

俺がもう限界に近いのを察したのか、夏也はまくしたてる様にいっそう激しく手を上下に動かし、もう片方の手は乳首をギュッと摘んだ。

「ぅあ…っ!!」

痺れる様な快感に、目の前がチカチカと点滅して、じんわりと滲み出る涙で視界がぼやけた。

「な…夏や…っ!あっ 出るぅ…っっ!」

「尚…っ いいよ…いって」

「や…っぁ、一緒が…いいの…に…っ
で…出る…ぅっ…っ」

「尚…いけって…いって いいから…」

「あぁっ……!!!
な…っん 夏…也ぁ………っっっ!!!!!」

頭が真っ白なって、
身体が波打つ様に大きくブルブル震えて、
俺は夏也の手の中で射精した。

ドクドクと先端から解放されて、受け止めていた夏也の手からもボタボタ溢れ落ちて、シーツを濡らす。

身体の痙攣は暫く続いて…
俺は夏也の肩にギュッと掴まりながら、射精後の余韻をやり過ごしていた。

ー夏也より先にいってしまった…

なんとなくバツが悪くて、夏也の顔を見ることができない。
夏也は何も言わず、俺の汗で湿った髪を撫でていた。

ーもぅ…なんだよ… ずいぶんやさしいんだな…

夏也の体温を感じながら、
そんな事を思っていた。

-e n d-
ーーー



尚くん主導かと思いきや夏也主導…
みたいな関係性って良いですよね?!









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